すべてはあの花のために⑤

なんか見慣れたな


 カードを確認した直後、会場は一気に暗闇に包まれる。いきなり照明が落ちたことで、会場中が慌て始めた。
 アキラがみんなに連絡を取り、各場所の状況の情報を集める。


「――状況報告。多分ブレーカーが落ちた。みんな、まわりのみんなを落ち着かせながらステージ裏に集合」

『アキ、俺一番ステージ近くにいるから、取り敢えずマイクで呼びかけるよ』

「圭撫。頼む。ステージ裏に一番近いのは誰だ?」

『おれかな! 急いでブレーカー上げるね!』

「よろしく頼む桜李。他のみんなは? 大丈夫か。怪我はしてないか」

『オレは大丈夫だ。……暗闇に乗じて少し襲われたぐれえだ』

「え。だ、大丈夫かチカ」

『な、なんとかっ』


 無線から鼻を啜る音が聞こえ、後でしっかり慰めてやろうとみんなが思った。


『あたしと菊ちゃん、それから一応理事長も大丈夫!』

『おーい、お前ら大丈夫か。冷静に対処しろよ』

『ここは君たちに任せてるからね。頑張って!』


『アタシたちも大丈夫よ』

「たちって、誰がいるんだ?」

『おれがいるよお~』

「茜か。わかった。あとは……日向。葵。二人は大丈夫か」

『うん。異常なし』

「そうか、よかった。……葵は? 葵、聞こえてるか」

『こちらも異常ないです。ただ暗闇で足を捻った生徒がいるみたいなので、その人を先に救護室へ連れて行こうかと。その後でステージ裏に向かってもよろしいでしょうか』

「カウンターに氷があると思うから、明かりが点くまではそれで対応してあげてくれ。それまでは動かずにな」

『了解しました』


 ――けれど、それを最後に葵とは連絡がつかなくなる。


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