すべてはあの花のために⑤
このまま鼻も塞がれたい?
「あーちゃん! なんでずっとかなちゃんと手繋いでたのっ!」
それは帰りのバスの中の話。
「え? ……あれ。なんでだっけカナデくん」
「え。……確かに。どうして手を繋ぎはじめたんだっけ」
二人は同じように首を傾げている。
「もおー! なんでそんなに仲良いのっ!」
「大丈夫だオウリくん。そんなに仲良くはない」
「アオイちゃん!? どういうこと?!」
「かなチャン落ち着いて……!」
「そっかあ~。おれとの方が仲良いもんね~?」
「そうだねー! オウリくんはやっぱり小っちゃくして手の平サイズでお持ち帰りしたいよ~」
「ええ……」
「お、オウリくん? どうしたの?」
「……あ、あかね。おれ、どうやったら小さくならずにお持ち帰りしてもらえると思う……?」
「え。……おうり。そんなこと考えてたの」
そんな会話をしてたらカナデが、「あ。アオイちゃん捜しに行ったからだ」と、なんで手を繋いだのかの発端を思い出してくれた。
「そうだそうだ。わたしがはぐれちゃったから、気づいてくれたカナデくんが来てくれたんだった」
と言っているうちに、何故だかカナデのお怒りメーターが徐々に急上昇。
「もおー! 思い出しちゃったじゃん! 俺は負けないからーッ!」
「か、カナデくんっ?!」
バスの中で叫びだしたカナデの口を、みんなで押さえにかかる。
「んー! んんんっー!」
「叫ばない?」
「んーっ! んんんっー!」
「……このまま鼻も塞がれたい?」
高速で頷いたカナデは、葵により解放された。
「それで? 一体何の勝負?」
「アオイちゃんは知らなくていいことっ」
みんなもよくわからないのか、首を傾げていた。
「(まあ何か変なことじゃないなら、全然いいんだけど)」
みんなも結局のところはしゃぎまくったのか、ほとんど帰りのバスの中は爆睡していた。