すべてはあの花のために⑤
sideツバサ
流石に遅くなったからと、ツバサは家まで送ってもらうことになった。
「お前さ、最近迎え呼んでるよな」
「う、うん。そ、そうだね」
「……何。まだ動揺してる?」
「しっ。してない、……こともない」
少しだけ意識してる葵に、思わず頬が緩みそうになる。けれど急に、彼女の様子ががらりと変わった。迎えの車が来たから、そのせいかとも思ったが。
「ツバサくん今だけだ。今だけ、わたしは君と友達じゃない」
「なっ?! おま、何言っ――」
そう言いかけたら、運転席からシントが下りてきた。
「遅くなってしまってごめんなさいシント」
「……いえ。大丈夫でございますよ、お嬢様」
二人のやりとりを見て、ツバサは眉に皺を寄せる。
「今日はちょっと遅くなってしまったから、九条くんを家まで送って差し上げようと思うの」
「……そうですね。その方が宜しいかと思います。生徒会の方に何かあってはいけませんから。流石はお嬢様です。たくさんの人に気遣いができるのですね」
ひとまずツバサは、様子のおかしい二人に合わせ、「……すみません。よろしくお願いします」と後部座席へと乗り込んだ。
今日はツバサがいるからと、葵が隣の座席へと座る。
「……お嬢様? 今日のクリスマスパーティーはどうでしたか?」
「ええ。大成功よ。仕事をしっかりしていただけあったわ。みんなとても楽しそうだったの」
ツバサは下手なことを言わないように努めた。けれど、葵が微笑みながら「九条くんはどうでした?」と言ってくるので、慎重に言葉を選ぶ。
「……はい。そうですね。準備に時間をかけただけあって、とても有意義な時間になったと思います」
「「――――」」
目を張る二人に、あれ? 何かまずったかなと思ったが、どうやらそれは違ったよう。二人はすぐ、申し訳なさそうに笑ったから。
「(どうしたんだ二人とも。何があったっていうんだ)」