すべてはあの花のために⑤

素敵なことは好きな人と


「それではシント。行って参ります」

「……はい。お嬢様。お気を付けて」


 スヌードを口元へ引き寄せながら、白い息をはあと吐く。


「帰りは向こうの最寄り駅までお願いします。ドレスは昨日指示したもので。19時待ち合わせにしましょう。一時間もあれば皇まで行けるかしら?」

「十分で御座います」

「……それじゃあ、行ってくるわね」

「……っ、はい。それではまた19時に、お迎えに上がります」


 葵はヒールを鳴らしながら、待ち合わせの最寄り駅へと向かう。


「……っ。いってっ。らっしゃい。ませ……っ」


 その後ろで葵を見送るシントが、奥歯を噛み締めながら静かに泣いていることも気付かずに。


 ❀ ❀ ❀


『こちらグリーン。対象者は現在、家を出て駅へと歩いて行っています。どうぞ』

「はーいお疲れ~。それじゃあそのままバレないようにあとつけてブルーと一緒にこっちまで来てねー」

『うん! 任せて!』


 おやおや? 何やら葵の後ろに、怪しい影が二つ。


「チカちゃん無事にアオイちゃんが家から出たの確認したってー」

「いや、何だ。そのグリーンやらブルーって」

「アキ知らないの?! 俺らのイメージカラーじゃん! その色の名前だよ!」

「いや、そんなこと聞いてるんじゃないわよ」


 チカゼとオウリ以外は、最寄り駅で葵が到着するまで隠れて待機中。


「だって『アキ! もうアイスはやめなさい!』とか言ってアオイちゃんに俺らがいるのバレたら困るでしょー」

「いや、ネーミングセンスの問題なんだよかなチャン」

「え? だったらアカネくんは、レッドとオタクって叫ばれるのどっちがいいー?」

「れっどで! 〇〇戦隊のリーダーみたいだし!」

「でしょ~? だからそうなったんだよー。ちなみに俺はイエロー」

「カレーじゃん」

「いいじゃんカレー!! みんな好きでしょ?!」

「じゃあもしかしてあたし、ピンク?」

「うん! キサちゃんぴったりだよねー。女ヒーローだねー!」

「……まさかあたしが『ヒーロー』になるとは思わなかったわ」


(※一応一覧にしてみたよ)
 アキラ → グレー
 カナデ → イエロー
 ツバサ → パープル
 アカネ → レッド
 チカゼ → グリーン
 オウリ → ブルー
 ヒナタ → オレンジ
 キ サ → ピンク


 そうこうしているうちに、葵を先回りしたチカゼとオウリ……じゃなかった、グリーンとブルーが登場!


「おい、もうすぐ来るぞ。何呑気にしてんだよ」

「そうだよ! あーちゃんそこまで来てるから!」


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