すべてはあの花のために⑤

外しちゃったら呪われそう


 それは、バスで移動中のこと。


「あれってさ、やっぱりちゅーしたの」

「きっ、キサちゃん……?!」


 隣同士で座っていると、いきなりキサから飛んできた爆弾。


「~~……っ」

「いやうん。その反応を見れば十分だわ」

「え……?」

「あたし、てっきり朝気まずくなってるもんだと思ったんだけど、なんか逆にいい雰囲気だったから。ちょっと気になってて」

「い、いい雰囲気……?」

「勝負とか何とか? あとは茜があっちゃんのこと諦めないとか何とか? もしかしてあのあと、茜に告白でもされた?」

「き、キサちゃん見てたの……?!」

「いや見てないけど。……そう。されたのね」

「はっ!」


 葵は完全に墓穴を掘った▼


「茜のことも振ったから、あいつは諦めないって言ったのね」

「……アカネくんも言ってたけど、どうしてわたしの返事をみんなが知ってるのっ?」


 口を尖らせる葵に、キサはクスッと笑う。


「それは、圭撫が言っちゃったからかな?」

「あれでしょ。トーマさんでしょ? その返事を聞こうとしたんでしょ」

「杜真が言う前に、圭撫が『振られたんでしょ』って言ってたよ」

「……カナデくんとっちめてくる」

「いやいや! 聞いたあたしらも悪かったから! ていうか根本はあたしに原因があるから! とっちめるならあたしにして!」


 慌てるキサに、葵は「へ? なんでキサちゃん?」と首を傾げる。


「あたしが、『どうせ告ってたんじゃないの?』とか言ったわけさね。それで、『ほら、どうなったか言ってみなさいよ?』とか言ったさね」

「(※鞭を持っているキサを想像)」

「そこで、圭撫が『振られたでしょ』って言ったわけさね」

「そ、そうだったんだね」


 だから、カナデはもう振られたのだろうと、そう思ったのだろう。今は誰とも付き合うつもりがないことを、知ったのだろう。


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