すべてはあの花のために⑤

どちらかというと


 植物園にもいろんな花があったけれど、花でいっぱいの夢の施設――通称夢の国(※葵が勝手に命名)にも、たくさんの花が咲いていた。葵たちは一旦ここで、遅めのデザートと軽めの軽食を摂ることに。

 すると時刻は、あっという間に16時になっていた。


「なんだかんだで楽しかったね押し花」

「そうだね~。結構簡単に出来たから、家でもやってみよっかな?」

「わたしも思った! みんなのもすっごい上手に作ってるから、他にも作ってみたくなっちゃったんだよねー」


 アキラのトレイは、使うのがもったいないくらいだし。

 カナデのキーホルダーは、ああ……女の子寄って来そうだね、とか思ったり。

 アカネの写真立ては、文化祭の写真飾るんだってー。

 オウリのキャンドルは、お母さんにあげるんだって言ってた。

 チカゼは、茶道をするのに花瓶があったらいいなとか言ってたけど、流石に茶室に飾れないみたいだったので祖母にあげるそう。

 ヒナタのコースターは普通に綺麗。しかも大人っぽくてちょっと悔しい。



 それから葵たちは、施設の中をぐるぐる回った。興味が惹かれたものに関しては、じっくりその花の説明も読んだ。


「あーちゃんってさ、花言葉には詳しくないの?」

「え? どうして?」

「だって、おれが着けてたブレスレットの石言葉は知ってたでしょ?」


 半分寝ながらだったのに、ちゃんと聞いてたんだね。


「……花言葉はね、調べる気になれなかったの」

「どうして?」

「お花は、枯れちゃうから。……それが寂しくて、花言葉は全然知らないんだ」


 にっこり笑って、葵は逃げるようにオウリから離れていった。


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