すべてはあの花のために⑤
ある花、植え替えられる
目を覚ますと、そこは柔らかくてあったかいベッドの上でした。
どうやら、小さなこどもは、溺れていたところを助けてもらったようでした。
「今日からはここが、君の新しい家だ」
助けてくれた男性は、こどもにそう言いました。
その家には、綺麗な女性もいました。
二人は夫婦でしたが、二人の間にはこどもがいませんでした。
二人は、どこの誰かもわからないようなこどもを、温かく迎えてくれました。
でも、お日さまを取られてしまったこどもの表情は、どこか暗く情緒が不安定でした。
ぼーっとしているかと思えば、いきなり暴れ出したりもしました。
しかし、こどもを助けた夫婦は、そんな状態のこどもを温かく包み込んでくれていました。
男性は、こどもに強くなることを教えました。
強くなって自分を、そして大切な他人を守れるようにと。
女性はこどもに歌を教え、絵本を読んでくれました。
いろんな感情を、こどもに教えました。
こどもは、この二人のことが、大好きになりました。