すべてはあの花のために⑤

これ以外の言葉が浮かんでこない


 そのあと案の定、レストランで尋問に遭いました。めちゃくちゃ睨まれました。
 それでも何とか見学は終わり、次は工芸体験へ。その道中ももちろん大変でしたけど。


「よしヒナタくん! いっくぞー!」

「はいはい」


 ここではいろんなことが体験できるそう。けれど人数制限があり、みんなで一つは難しかった。
 なので数人ずつに分かれて、それぞれがしたいことを順番に回ろうということに。葵はヒナタと回ります。


 葵たちがまず取り掛かったのはオリジナルTシャツ作り。好きにデザインできるということだったので、葵は思いついた言葉を書くことにした。


「うっし! こんなもんかな?」

「え。あんた、ほんとにそれでいいの?」


 葵が作ったTシャツには、表に【混ぜるな危険】裏に【ウコン・乳酸菌・炭酸・わたし】と、書かれていた。流石のヒナタも、突っ込まざるを得ない。


「うん! 今のわたしには、これ以外の言葉が浮かんでこない!」

「沖縄要素全然ないじゃん。せめてゴーヤチャンプルぐらいにしとけばよかったのに」

「はっ!」

「おっそ」

「これは自分で着るから、ゴーヤはシントにあげる!」

「え。もう一枚作るの?」


 そしてヒナタは、心の中でシントに謝りました。余計なこと言いました。ごめんなさいと。


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