すべてはあの花のために⑤
ぴ、ぴよぴよ?
ホテルに帰ってくる間みんなに質問攻めされたけど、どちらかというと葵もわけがわからなかったので逆に質問したかったくらいだ。
「(ヒナタくんの場合、『今から冗談言います』とか『ほんとのこと言います』とか言ってくれないと困るんだよなあ。振り回されるから確実に)」
ホテルに帰ってきてみんなで夕ご飯を食べたあと、また誰かの部屋で集まろうという流れになったけれど。
「残念でしたー。今日はあっちゃんはあたし専用なので」
「あ。そうだった。一緒にお風呂入ろうねー」
「うん! 久々女子トークしよう!」
「そこまで話すことはないけど……うん。絞り出すわ」
男子勢は少し寂しそうだったけれど、どうやら向こうは向こうで男子トークをするらしい。
「こういうのも修学旅行って感じだね」
「そうなんだ! 楽しいねっ」
準備を整えてから、葵はキサの部屋のお風呂へ。
「にしてもあっちゃんさ、正直モテすぎじゃない? 心配になるよここまで来たら」
「いやいや、キサちゃんも作品に出てないだけで結構モテてるから。安心して?」
「あたしはキクちゃんだけでいいや~」
「それもそうだなー」
ちゃぷんと、波が立つ。
「にしても、お風呂の時も着けてるんだね」
「え? これ?」
キサが突いたのは、葵の首に光るハート。
「だって肌身離さずって言ったから」
「……大丈夫かな」
「え?」
「店員さん、お風呂の時はとか言ってなかったから。傷んじゃったりとかしないといいんだけど」
「そうなんだね。でも、きっと大丈夫だと思う」
「え? どうして?」
「この穴の中までは流石にわからないけど、見る限り表面は傷むような素材ではなさそうだし。それに、なんか離しちゃいけない気がするから。だから、大丈夫!」
「そっか。でもあっちゃんの勘結構当たるから、あっちゃんがしたいようにすれば、それが正解だと思う!」
「ははっ。うん! そうだね!」
葵も、つんと首のハートに触れた。