すべてはあの花のために⑤
sideヒナタ
「日向。どういうことだ。折角今回は俺が葵といい雰囲気だったのに、お前のせいで全部持って行かれたじゃないか」
「あ。アキくんいっぱい喋ってるね」
「おいヒナタ! オレだって結構いい感じだったんだぞ!」
「あ。そういえばチカ、あいつと手繋いでたじゃん。よかったね。恋人でもないのにあの繋ぎ方できて」
「お、おまっ、何で知っ――」
しばらくの間、飛び火したチカゼはみんなに揉みくちゃにされた。
「にしてもほんと、ヒナくんがアオイちゃんといい雰囲気になるとか珍しいー」
「カナ、そんな目で見られてもオレは一つもそんなこと思ってないんだけど」
「でもあおいチャンも、なんだか嬉しそうだったよ?」
「ひーくん何したの! 教えて教えて!」
「え。普通に写真撮ってあげただけだけど」
「写真?」
「そう。なんかトーマに送って欲しいって言われて……あ。トーマのことすっかり忘れてた。ま、いっか。なんかムカつくし」
「アンタ待ちなさい。それだとあの子が可哀想でしょう。送ってあげなさいよ」
「嫌だよ。『何で日向から来るの?!』ってグジグジ言われるのが落ちだもん」
そう言うと、「それもそうね。ちょっとそれは考えましょう」と、ツバサは賛同してくれた。流石は兄。
「にしても、アンタがそんなの着けるなんて珍しいじゃない」
ツバサがつんつんと、ヒナタの右腕に着いているブレスレットを突く。
「え。だって、折角だし?」
「でもアンタ、アクセサリーつけないじゃない普段」
「……だって、お揃いだし?」
にこりと笑うと、みんな揃って楽しくなさそうな顔をした。
「……まあ、別にそんなつもりで着けたわけじゃないから。安心してよ」
「だったら取ってよひーくん!」
「え。やだ」
「なんで!」
「…………秘密?」
そして轟くみんなの叫び声。
「だから、うっさいんだって。いい加減にしてよ。ここオレの部屋」
ヒナタは大きくため息を落とした。