すべてはあの花のために⑤
ある花、生長する

 それから二人にたくさんのことを教わりながら、こどもは心を安定させていきました。


 ある日、こどもは二人に花の育て方を、教わりました。


「この小さな種から、大きくてとっても綺麗な花が咲くんだ」


 こどもは頷きます。
 種から花を咲かせることは、知っていたからです。


「それじゃあ、この種が何のお花かわかるかしら?」


 流石に種だけで、花はわかりませんでした。


「この種が何の花なのか、知りたくないか?」


 こどもは大きく頷きました。


「それじゃあまずは、このあったかくて柔らかい土に植えてあげましょう」

「その次は、毎日水をあげるんだ」

「そして、毎日たくさん話しかけてあげるの」

「最後に、たくさんの愛情を注いであげるんだ」


 こどもは、二人の言っていることがよくわかりませんでした。

 それでも何の花か知りたかったこどもは、芽が出る度、その芽が大きくなる度、蕾らしきものが大きく膨らむ度に、二人に嬉しくなって報告をしました。


 こどもはその度に、よく暴れていたのが時々になり、時々暴れていたのが、殆ど暴れなくなりました。


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