身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
祈りと願い



 エリシアは来る日も来る日も、カイゼルやビクターとともに執務室で資料の仕分けをしていた。

 父のグスタフはさまざまな植物の研究に勤しんでいたようで、ビクターがルーゼに関する資料を抜き出し、エリシアはそれをまとめてカイゼルへ運ぶ作業を手伝っていた。

 カイゼルは一日中資料とにらめっこしていたが、時折、ビクターを執務室に残して外出した。どこへ行ったのかとビクターに尋ねても、宮殿内にいるから気にしなくても大丈夫としか教えてもらえなかった。

(……別に、気にしてなんてないけど)

 エリシアは内心、むきになりながら、カイゼルの机を眺めたものだった。

(どうしてキスなんてしたのかしら……)

 あれから二人きりで話す時間はなくて、カイゼルは何もなかったように接してくる。しかし、夜遅くまで続く作業には決して付き合わせず、ルイと会う時間も作ってくれる優しさに戸惑う日々だった。

「ビクター、準備が整ったようだ。今日はノアリエルの療養所まで出かけるぞ」

 ある日、カイゼルは執務室へやってくるなりそう言った。すぐさまビクターが上着を羽織る中、エリシアは書類を抱えて立っていた。

「エリシアもついて来い」

 カイゼルが書類を取り上げるなりそう言うから、エリシアは尋ねた。

「何かわかったんですか?」
「異国では昔から、ルーゼを無病息災の果実として食してきたらしい。ルーゼを食べることで還炎熱が抑えられるなら、アルナは関係ないとも考えたんだが、ベルナンは、ルーゼの果実を繰り返し食したことが結果的に病の発症を抑えただけで、アルナが無関係とは言えないと結論づけた」
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