身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
名ばかりの聖女
*
「本当に行っちゃうの? エリシア。私たちのために、行きたくもないのに行くなんてやめてよ」
自室へ戻ると、洗ったばかりの清潔な衣類に袖を通し、お守り代わりにいつも持ち歩くルーゼの香水をポケットへ入れるエリシアに、ルルカが心配そうに話しかけてくる。
「ルルカたちのためじゃないよ。私が行きたいから行くの」
「そんなの嘘。エリシアは怖くないの?」
エリシアはバッグに荷物を詰めていた手を止め、しばらく考えるように黙った。
シムアに来てから、自分でも驚くぐらい平凡な毎日を送っていた。不安も恐れもない日常を手放すのは、きっと簡単じゃないだろう。
「ちょっとは怖いけど……、困ってる人がたくさんいて、少しでも役に立てるならって思うし」
「それは……私たちもおんなじ気持ちだよ。怖いけど、行かなきゃいけないって思ってる」
ルルカは胸に手を当てて、マルナを見る。ふたりは目を合わせるとうなずき合う。
「ねぇ、エリシア。今からでも遅くないよ。私たちが……」
「ふたりは守らなきゃいけない子どもたちがいるじゃない。だから、今は私に行かせて」
「本当に行っちゃうの? エリシア。私たちのために、行きたくもないのに行くなんてやめてよ」
自室へ戻ると、洗ったばかりの清潔な衣類に袖を通し、お守り代わりにいつも持ち歩くルーゼの香水をポケットへ入れるエリシアに、ルルカが心配そうに話しかけてくる。
「ルルカたちのためじゃないよ。私が行きたいから行くの」
「そんなの嘘。エリシアは怖くないの?」
エリシアはバッグに荷物を詰めていた手を止め、しばらく考えるように黙った。
シムアに来てから、自分でも驚くぐらい平凡な毎日を送っていた。不安も恐れもない日常を手放すのは、きっと簡単じゃないだろう。
「ちょっとは怖いけど……、困ってる人がたくさんいて、少しでも役に立てるならって思うし」
「それは……私たちもおんなじ気持ちだよ。怖いけど、行かなきゃいけないって思ってる」
ルルカは胸に手を当てて、マルナを見る。ふたりは目を合わせるとうなずき合う。
「ねぇ、エリシア。今からでも遅くないよ。私たちが……」
「ふたりは守らなきゃいけない子どもたちがいるじゃない。だから、今は私に行かせて」