身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
偽りの発覚
 あっという間に、大広間の中は「聖女様!」の歓声に包まれた。いまだ、信じがたいとばかりにエリシアをにらみつけるカイゼルだったが、ビクターに促されると、不機嫌なまま大聖堂を出ていった。

「エリシアが聖女ってどういうこと?」

 カイゼルの姿が見えなくなった途端、ルルカが前のめりになって尋ねた。

「私も何がなんだか……」
「わからないの? リビア様に認められてるってすごいことだよっ」
「そうよ。還炎熱の再燃がないっていうのも、本当なんでしょう? リビア様の代わりに王宮へ行くなんて名誉以外にないわ」

 興奮するルルカに同調して、マルナまでそんなことを言う。

「私は王宮になんて……」

 否定するように首を振ったとき、エリオンが話しかけてくる。

「エリシアさん、奥の部屋へ来てください。ルルカさんにマルナさんも、ご一緒にお願いします。今後について、サイモン様からお話があるでしょう」

 早口でエリオンは言うと、騒がしい大広間から抜け出すように長い廊下を進んだ。

 エリシアたちが連れていかれたのは、いつもリビアが過ごしていた祈りの間だった。祭壇の前では、グレゴールとサイモンが気難しい表情で話し合っていたが、エリシアに気づくと、サイモンが足早に駆け寄ってくる。

「大変なことになりましたね。カイゼル殿下は厳しいお方です。今さら、エリシアさんは聖女ではないと断ることはできません」
「お断りしたらどうなるかは……わかっているつもりです」

 エリオンに指示を出している様子のグレゴールをうかがいながら小声で言うと、サイモンは同情の目を向けてくる。

「私は正直、反対です。しかし、司祭様の判断は賢明であったとも考えています。エリシアさんには、もしかしたら奇跡が起こせる力があるかもしれないと、誰もが期待しているのですから」
< 50 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop