身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
甘酸っぱい果実
*
林を抜けると、懐かしい村の空気が鼻をくすぐった。これはフェルナ村の匂いなのだろう。村で暮らしていたときには気づかなかったが、澄んだ空気の中に爽やかな匂い……、そう、これはルーゼの香りだろう。
父の残したルーゼの香りが、もしかしたら村のみんなを守ってくれていたのかもしれないなんて考えたら、エリシアははやく父の作業場へ駆けていきたくなった。
馬車の窓から顔を出し、もう少しで到着する村の入り口を、いまかいまかと待ち構えていると、くすりと後ろから笑い声が聞こえた。
「エリシアは冷静な娘かと思っていたが、少女のようにはしゃいだりもするのだな」
(私がいつ、はしゃいで……?)
驚いて振り返ると、カイゼルが楽しそうにほおをゆるめている。
「ルルカだったか、あの娘と話す時は宮殿では見せぬ顔をしていたな。宮殿はそれほど窮屈だったか?」
どうやら、ルルカのはしゃぎようを見て、一緒に騒いでいるように見えていたようだ。ルルカがいなければ、あまりはしゃぐこともないのだが、エリシアは迷って答えた。
「宮殿では気が抜けないので、そう見えただけではありませんか? ビクターさんのように、のびのびしている方がおかしいんです」
「ビクターは図々しいところがあるからな。エリシアももっとかしこまらずにいるといい。母上もおまえを気に入っているようだし、何も問題はないだろう」
「……はあ」
思わず、あきれた声が出た。今後の処遇を決めるのはカイゼルだ。ルイの再燃がないことを確認するまで宮殿にとどまるように言ったのも彼で、とても気ままに暮らせるとは思えない。
林を抜けると、懐かしい村の空気が鼻をくすぐった。これはフェルナ村の匂いなのだろう。村で暮らしていたときには気づかなかったが、澄んだ空気の中に爽やかな匂い……、そう、これはルーゼの香りだろう。
父の残したルーゼの香りが、もしかしたら村のみんなを守ってくれていたのかもしれないなんて考えたら、エリシアははやく父の作業場へ駆けていきたくなった。
馬車の窓から顔を出し、もう少しで到着する村の入り口を、いまかいまかと待ち構えていると、くすりと後ろから笑い声が聞こえた。
「エリシアは冷静な娘かと思っていたが、少女のようにはしゃいだりもするのだな」
(私がいつ、はしゃいで……?)
驚いて振り返ると、カイゼルが楽しそうにほおをゆるめている。
「ルルカだったか、あの娘と話す時は宮殿では見せぬ顔をしていたな。宮殿はそれほど窮屈だったか?」
どうやら、ルルカのはしゃぎようを見て、一緒に騒いでいるように見えていたようだ。ルルカがいなければ、あまりはしゃぐこともないのだが、エリシアは迷って答えた。
「宮殿では気が抜けないので、そう見えただけではありませんか? ビクターさんのように、のびのびしている方がおかしいんです」
「ビクターは図々しいところがあるからな。エリシアももっとかしこまらずにいるといい。母上もおまえを気に入っているようだし、何も問題はないだろう」
「……はあ」
思わず、あきれた声が出た。今後の処遇を決めるのはカイゼルだ。ルイの再燃がないことを確認するまで宮殿にとどまるように言ったのも彼で、とても気ままに暮らせるとは思えない。