二度目の人生でかつての戦友が私を溺愛する
剣術大会
ーー季節は夏
今日はセロン様に誘っていただいた剣術大会だ。
セロン様から大会のことを聞いたときは、内輪のお祭りのようなものと思っていたけれど、クラスメイトに聞いたり、学園内のPRを見ていると、どうもかなり大きなイベントのようだった。
学内の生徒はもちろん、出場者の家族、王国防衛軍のスカウト、剣術に関心のある政府の重鎮など、学外の来賓も見物に来れるそうだ。
王国防衛軍を目指すロイにとってはアピールするいいチャンスになるだろう。
私自身は…なんとなく自分の実力を確かめたくて出場することを決心した。
前世の私の実力がリンの魔術込みであったことは、正直悔しい。
あの頃はそれでよかった。後悔はない。
魔術があったからこそ、アイダの力になれたもの。
結果無意味だったとしても…
それでも、今世では私自身の剣の力を試してみたい。
私はやっぱり剣が好きなんだわ。
「ハナ!」
「リン…」
笑顔のリンがギル様と並んで手を振る。
私も笑顔を作って手を振り返すと、リンが駆け寄ってきた。
「剣術大会って活気がすごいのね!
この中でハナの勇姿が見られるなんてすごく楽しみ!」
「勝ち進められればね…」
受付の時に運営の方に聞いた話だと、ランダムなトーナメント形式で優勝者を決めるようだ。
負ければすぐに終わってしまう。
「勝てるわよ!ハナとロイは1年生の中では敵なしだもの!」
「そうだな、俺もそう思う。」
「ギル様…」
ギル様とリンは…
恋人同士になった。
あの誘拐事件の時に勘づき、落ち着いた頃にリンから聞かされた。
やっぱり今世でも2人は結ばれた。
だって出会ったときから惹かれ合っていたもの。
私がギル様に恋するように、2人が結ばれることも決まっていたのだわ。
言いようのない虚しさはあるけれど、もう涙は出なかった。
前世のあの出立の馬車の中で、私の失恋の涙は枯れてしまったのかもしれない…。
だけど、心に穴が空いたような感覚はずっとある。
新入生歓迎パーティーのときから、転生した理由を自問自答し続けているけど、答えは出ていない。
その時ふとアシュリー様の言葉を思い出した。
『剣士の命を削ったら…』
アシュリー様の推理は正しいのかもしれない。
だけど怒りとか悲しみはなくて、むしろそんな魔術をかけたリンが心配だわ…。
つらくなかった?
それとも私のことを憎んでいた?
あなたが自死した理由となにか関係がある?
前世のことは許すわ。
だけど、どうか思い出さないで。
平和な今を楽しく過ごして…。
リンが私をどう思っていても、私はリンを愛してるわ。
私は私のことが好きになれないけれど、リンのことを好きでいれる私自身を少しは認められるの。
「ハナ?どうしたの?」
「えっ、ううん!なんでもないわ!」
「そう?」
リンが穏やかな笑顔を浮かべる。
「ロイとも合流しましょう。きっともう体育館の方に行ってるわ!」
「ええ、そうね」
私とリンとギル様は並んで会場となる体育館へ向かった。