【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

Fin.星に願いを


 それは一年で最も夜が長い、冬至の日の昼下がりのこと。
 平民に扮したエリスとアレクシスは、『星まつり』を楽しむため、帝都中央広場へと足を運んでいた。


「本当に殿下の仰っていたとおりですわ! 街中が星型で彩られて、まるで夢の中のようです……!」
「そうだろう? 『星まつり』は、帝都三大祭りのうちの一つだからな」
「日が暮れたら、(あか)りを(とも)したランタンを運河に浮かべるんですよね?」
「ああ。あれは美しいぞ。ランタンには自分で模様を入れることもできるんだ。後でやってみるか?」
「ええ、ぜひ……!」


『星まつり』とはその名のとおり、星に願いを捧げる祭りのことだ。
 もともとは『闇を追い払った太陽神ミトラスに、次の一年を無事に過ごせるよう祈りを捧げる儀式』だったが、いつしか、『夜空の星々に願いを託す祭り』に変化した。

 今では、この夜に願い事をすると叶うと信じられており、人々は日が落ちると、願いを込めたランタンを運河に浮かべ、夜空に願いを捧げるのだ。
 
 そんな祭りを象徴するように、街のいたるところに星形の飾りが飾り付けられ、広場に立ち並ぶ沢山の屋台には、星を模した菓子や小物が並んでいる。

 建国祭のとき同様、大人も子供も、身分も関係なく祭りを楽しむ様子は、エリスにとって、とても新鮮なものだった。

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