氷壁エリートの夜の顔
第18話 月の下で
結城さんのマンションは、思っていたよりもずっと素敵だった。
石畳のアプローチを抜けると、低木と間接照明に囲まれた、落ち着いた雰囲気のエントランスが現れる。
ガラス扉の向こうには広めのホール。その奥にある木製の大扉の前で、「着きました」とメッセージを送ると、ロックの外れる音がして、「上がってきて」と返信が届いた。
扉を開けると、モダンなアートが飾られた静かな空間が広がっていた。都内とは思えない、ゆとりのあるつくり。
自分の小さなアパートを思い出して、なんだかちょっと、いたたまれない気持ちになる。
──まあ、私は庶民代表枠だからいっか。
私はエレベーターへと足を運んだ。
スーツのジャケットだけ脱いだ結城さんに促されて、おずおずと靴を脱いだ。
ネクタイもベストもそのまま。オフィスで見慣れているはずのスタイルなのに──氷壁の結城さんと古美多の結城さん、そのちょうど真ん中あたりにいるような、別の誰かに見えた。
また一つ違う彼を見つけたようで、ちょっと嬉しくなる。
石畳のアプローチを抜けると、低木と間接照明に囲まれた、落ち着いた雰囲気のエントランスが現れる。
ガラス扉の向こうには広めのホール。その奥にある木製の大扉の前で、「着きました」とメッセージを送ると、ロックの外れる音がして、「上がってきて」と返信が届いた。
扉を開けると、モダンなアートが飾られた静かな空間が広がっていた。都内とは思えない、ゆとりのあるつくり。
自分の小さなアパートを思い出して、なんだかちょっと、いたたまれない気持ちになる。
──まあ、私は庶民代表枠だからいっか。
私はエレベーターへと足を運んだ。
スーツのジャケットだけ脱いだ結城さんに促されて、おずおずと靴を脱いだ。
ネクタイもベストもそのまま。オフィスで見慣れているはずのスタイルなのに──氷壁の結城さんと古美多の結城さん、そのちょうど真ん中あたりにいるような、別の誰かに見えた。
また一つ違う彼を見つけたようで、ちょっと嬉しくなる。