氷壁エリートの夜の顔
第26話 俺が好きなのは
定時で会社を出て、まっすぐアパートへ戻った。
バッグを置き、ローテーブルの座布団に座ると、スマホで銀行アプリを開く。
画面に表示された残高を見つめながら、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返した。
もし──本当に、何か深刻な病気だったら、お母さんには、信頼できる病院で、納得のいく治療を受けさせてあげたい。
でも、その費用を捻出して、双子の進学まで支えきれるだろうか。
相談すれば、きっとあの子たちは頷く。
柚月は日が暮れるまでグラウンドに立ち続け、律希は眠い目をこすりながら机に向かっている。
そういう子たちだ。もっと努力して、奨学金や推薦を狙おうとするに違いない。
でも、これ以上、彼らの「これから」を犠牲にしてまで、無理をさせたくなかった。
私が背負うべきものまで、あの子たちに預けるわけにはいかない。
思考がまとまらなくなって、私はそっとテーブルに伏した。
目の奥がじんじんと痛み、呼吸さえ重く感じる。
──そのとき、チャイムが鳴った。
バッグを置き、ローテーブルの座布団に座ると、スマホで銀行アプリを開く。
画面に表示された残高を見つめながら、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返した。
もし──本当に、何か深刻な病気だったら、お母さんには、信頼できる病院で、納得のいく治療を受けさせてあげたい。
でも、その費用を捻出して、双子の進学まで支えきれるだろうか。
相談すれば、きっとあの子たちは頷く。
柚月は日が暮れるまでグラウンドに立ち続け、律希は眠い目をこすりながら机に向かっている。
そういう子たちだ。もっと努力して、奨学金や推薦を狙おうとするに違いない。
でも、これ以上、彼らの「これから」を犠牲にしてまで、無理をさせたくなかった。
私が背負うべきものまで、あの子たちに預けるわけにはいかない。
思考がまとまらなくなって、私はそっとテーブルに伏した。
目の奥がじんじんと痛み、呼吸さえ重く感じる。
──そのとき、チャイムが鳴った。