蛍火のような恋だった
第7章 本当のこと
(凪side)
蛍が病院に運ばれて、どれくらい経ったのかわからない。
正直、ここに来るまでの記憶が全くない。
俺はただ、待合室の椅子に座って、爪が食い込むほど強く拳を握りしめていた。
きっと血が出てもおかしくないくらい力が入っていたのだろうけど、そんな痛みは全く感じない。
どうして、蛍をひとりにしてしまったのだろう。
遊園地になんで、行かなければよかったのだと、遅い後悔ばかりが募る。
「ひとまず状態は落ち着いています。また何かありましたら、すぐご連絡させていただいてます」
「…ありがとうございます」
廊下から看護師と、男性の声が聞こえてきた。
蛍が病院に運ばれてしばらくの後、蛍の両親が駆けつけた。
急いでいたこともあって、軽く会釈を交わしただけで、ちゃんと挨拶をしていない。
廊下の奥から、少し疲れた顔をしたふたりがこちらに来るのを見て、俺は立ち上がった。