蛍火のような恋だった
第8章 進む瞬間(とき)


入院をしてから、早1ヶ月。

強い薬を使って症状が出ないようにしているため、あれから発作は起きていない。

学校はとっくに2学期を迎えているけど、私はもう学校に戻ることができない。

夏休み中、1日も欠かさず来てくれた凪くんは、学校が始まって、もっと忙しくなる。

仕方がないけど、それが寂しかった。

彩綾ちゃんも峯岸くんも、元気にしてるかな…

夏休み前に会ったのが最後だから、ふたりの顔は長らく見れていない。

「蛍」

病室の扉が開いて、お母さんが入ってきた。

顔が、すごくこわばっていた。

それで、なんとなく察しがつく。

「先生がね、蛍に話があるんだって」

「うん、わかった」

私は小さく笑って、お母さんを見る。

車椅子に乗って、病室を後にした。




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