蛍火のような恋だった
Epilogue


春風の香る3月、俺は蛍の墓の前にいた。

「もうすぐ、3年生になるんだ。部活も進路もいろいろ大変だけど、頑張るよ」

返事はないけど、春の日和のように、蛍が微笑んだ気がする。

「あ、凪、おっすー!」

賑やかな声に、俺は顔を上げる。

裕也と山田がふたりそろって蛍の墓参りに来たらしい。

「中島くんも、月命日には必ず来てるの?」

「ああ。そっちも?」

「まあね。私、ずっと蛍の親友だもん。月命日だけじゃなくて、ちょくちょく来て近況報告してる」

隣にいた裕也も、「俺も、毎月来てんだよ。な、蛍ちゃん」と、蛍の墓に向かってにニカっと笑う。


雲ひとつない空を見上げる。

俺から蛍は見えないけど、蛍は今も俺たちを見ているのだろう。



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