蛍火のような恋だった
第4章 迷い路 (まよいじ)

「どうせ今日の体育だって来ないに決まってるじゃない」

「ちょっと梨花、やめなって」

教科書をしまっていた私のすぐ近くで前川梨花(まえかわ りか)ちゃんがそう言うと、一緒にいた女子があわててこちらに目を向けた。

ひそひそと小さな声で話しているけど、多分わざと私に聞こえるように言っている。

前川さんはクラスの一軍女子のリーダー的存在。

あまり話したことはないけど、私は少し苦手だった。

転校して約1ヶ月。

私は一度も体育の授業に参加していないから、それを変に思った女子が最近こそこそと話しているのを耳にするようになった。

クラスのみんなは私の状態を知らないから、サボりって思われるのは当たり前。

最初は適当に「少し前に足のケガして、お医者さんに体育はしばらく休みなさいって言われてるんだー」なんて誤魔化してはいたけど、流石に3週間も経てばみんなも不思議に思い始めたのだろう。

けど出来ないことは出来ないし、何を言われても気にならない。



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