蛍火のような恋だった
第5章 蛍光(ほたるびかり)の中で
それから数日間、私は中島くんと顔を合わせることも、言葉を交わすこともしていない。
私が、一方的に避けてるから…
今まで中島くんの部活がない日は必ず屋上で顔を合わせていたけど、昨日は屋上に行かなかった。
何度も中島くんが何かを言いたそうにこっちを見ていることはわかっていたけど、どんな顔をすればいいのかわからなくて、それも気づかないふりをしている。
朝礼が始まるまで、まだ時間がある。
重い気持ちのまま、私はカバンから出した教科書を机の上に重ねていく。
「おっはよーす!」
ひとり沈んだ気分の私とは真反対の、元気な声が教室に響いた。
なぜか他クラスの峯岸くんが入ってくる。
「あ、おっはよう、蛍ちゃーん!」
「お、おはよう」
峯岸くんがひらひらと手を振りながら、中島くんの席に近づいていく。
「おーい、凪、今日の部活だけどーーー」
部活のことを伝えにきたらしい。
私は持っていた教科書を机にコツンと打ち付け、端を揃えた。