まほうどうぶつのお医者さん

4

放課後。

家にランドセルに置いて、ニーナとモカは公園で待ち合わせ。

ニーナがわたあめちゃんを抱っこしてベンチに座って待っていると、モカが笑顔で走ってやってきます。

「わたあめちゃん!」

 ニーナのヒザの上ですやすやと眠っているわたあめちゃんを見て、モカはほっとした表情を浮かべます。

「かわいい。よく寝てるね」

「うん。でも、昨日からなにも食べてないから、お腹すきすぎて元気に動けないだけかも」

「そうなんだ……でも、もうだいじょうぶ!」

モカはニーナを元気づけようと、明るい声を出します。

「うちのおばあちゃん、やっぱり魔女さんと知り合いだったよ! 魔女さんに電話してくれて、少しの時間なら、お家に行ってもいいって!」

ニーナの顔がぱあっと明るく輝きました。

「やった! モカ、ありがとう!」


2人が急いで向かった先は、このあたりでは有名は「魔女の家」。

古びたレンガ造りの洋館です。

「うわぁー、やっぱ、いつ見てもすごいねぇ」

モカが「魔女の家」を見あげて、感心したようにいいます。

家の壁には蔦という植物が壁を覆っていて、2階の窓にも届きそう。

「ほんと、すごい……。きれいだなぁ」

ニーナは、緑色の柵の向こうの庭をうっとりとした気持ちで眺めます。

そこは、まるで植物の楽園のよう。

ニーナやモカの胸くらいの高さほどの木や草が生いしげって、いろんな色味の緑色が重なり、そこにピンクや紫、黄色、白、水色、といったたくさんの花が咲いているのです。

花の周りには蝶や蜂も飛んでいます。

このお家がみんなから「魔女の家」と呼ばれている理由は、この洋館と庭の雰囲気が、絵本に出てくる魔法使いのお家みたいだから、というのがひとつ。

そして、もうひとつの理由は。

「この草の中に、わたあめちゃんを元気にできる薬草があるかな……」

ニーナは庭の草をじっと見つめます。

薬草、というのは、薬として使える植物のこと。

この家に住むおばあちゃんは、薬草の研究家で、それでこんなにたくさんの草木を育てているのです。

おばあちゃんは、ずっと昔からここに住み、薬草の知識で近所の人の困りごとを解決してきたそうです。

それで、助けてもらった人たちが、「まるで魔法使いみたいだ」と話していたのが、いつしか子供たちの間で、「あの家のおばあちゃんは実は本物の魔法使いらしい」というウワサになって広まったのでした。

だから、ニーナとモカにとっては、ここは正真正銘、本物の魔女が住む魔女の家です。

じゃんけん、ぽん!

「……まけちゃった」

ニーナが、おそるおそるインターフォンに指を伸ばします。

いくらモカのおばあちゃんが話をつけてくれているとはいえ、知らない人のお家を訪ねるのは緊張します。

しかも、相手は本物の魔女かもしれないのです!

なにか、失礼があったらどうしよう。

怒らせたら、カエルにされちゃうのかな!?

怖いな。

それでも、わたあめちゃんを助けたい気持ちのほうが勝ちます。

えいっ。

ニーナは勢いよくインターフォンのボタンを押します。

ピーンポーン。

ニーナとモカがドキドキしながら待っていると、ガチャっと洋館の扉が開く音が聞こえてきました。

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