まほうどうぶつのお医者さん

ニーナは、家に戻って、キッチンへと向かいます。

そして、冷蔵庫の扉を開けて、ひんやりつめたい空気をわたあめちゃんに浴びせます。

「ちょっと、ニーナ。冷蔵庫を開けっぱなしにするなんて……お母さんがいちばん怒るやつ!」
 
 モカはハラハラした顔。

「だいじょうぶ! お母さん、出かけてるから!」

「いやでも、エコじゃないし……」

「それは、ほんとごめんって感じだけど……でもほら」

「あ!」

わたあめちゃんが、くいっと顔を上げました。

「涼しい? 中、入ってもいいよ!」

ニーナは冷蔵庫の野菜室の引きだしの中身をぜんぶテーブルに出して、かわりにタオルを敷いて、わたあめちゃんを寝かせます。
そして、ミルクの入ったお皿をわたあめちゃんに差しだすと……。

「わぁっ! 飲んだ!!」

わたあめちゃんは、お皿に鼻を近づけてクンクンとにおいをかいだあと、ピンク色の舌をちろっと出して、ミルクをなめました。
ペロペロ。チロチロ。

わたあめちゃんがミルクを飲んでくれたのがうれしくてうれしくて、その姿がかわいくてかわいくて、ニーナはなんだか泣きそうな気持ち。

「え、どういうこと!?」

モカはびっくり。

「あのね、私、やっぱりぜったいにわたあめちゃんは空の上から来たと思ったの。で、空の上ってどんなところかなぁって想像したら……」

「そっか! 空の上って寒いんだよね!」

「そうなの。前に山登りしたとき、ポカポカ温かい日だったのに、頂上まで登ったら寒くてびっくりしたことがあって。そのとき、お父さんがいってたんだ。高いところに行けば行くほど、どんどん寒くなるんだって。だから、わたあめちゃんとって、ここは暑すぎるんじゃないかと思って」

「すごい、ニーナ! さすが!!」

「えへへ。わたあめちゃん、他にもなにか食べられるかな」

ニーナはお父さんの病院からドッグフードをもらってきて、わたあめちゃんの前に置きます。

ドッグフード、食べられるかな?

ドキドキしながら見ていると、わたあめちゃんは鼻をクンクンさせた後、ぱくり、と一口。
それから、むしゃむしゃと夢中で食べはじめました。

「か、かわいいぃ~~~~~~~」

ニーナとモカは、その姿にキュンとしてわたあめちゃんを見守ります。

「わたあめちゃん、これできっと元気になるね」

モカがうれしそうにいいます。

モカのうれしそうな顔を見て、ニーナは思います。

やっぱり、モカは最高のお友だちだ。

「ねぇ、モカ。今日ウチでお泊り会しようよ! わたあめちゃんが元気になったお祝い!!」

「いいね! 最高!」

まずはお母さんにお願いして、それからお菓子を買いに行って……。

お泊り会の計画で大盛り上がりのニーナとモカを見あげて、わたあめちゃんはちょっと首をかしげて、それからまたドッグフードに夢中になるのでした。

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