まほうどうぶつのお医者さん
7
その日の夜。
ニーナのお母さんが作ったオムライスを仲良く食べて、お風呂に入って、そのあとは、2人がいちばん大好きな、パジャマパーティーです。
いちばんお気に入りのパジャマを着て、ニーナのお部屋のベットに腰かけて、たくさん遊んでおしゃべりするのです。
今日の2人パジャマは、冬用のあったかパジャマ。
なぜって、ニーナの部屋の空気はキンキンに冷えているからです。
寒くてお布団にくるまっているニーナとモカ。
でも2人は寒さなんてへっちゃらです。
だって、かわいいわたあめちゃんが元気いっぱいお部屋の中を走りまわっているから!
「わたあめちゃん、こっちにおいで」
ベットの上からニーナが呼ぶと、わたあめちゃんはぴょこんとニーナのヒザの上に飛のりました。
「すっかり仲良しだね~」
にこにこ顔のモカ。
ニーナも笑顔でうなづいて、「でも……」と顔を曇らせます。
「これからどうしよう。わたあめちゃん、お家にかえしてあげたいけど、どうすればいいのかぜんぜんわからない」
わたあめちゃんは、ケガが治って元気になったら自分でお家に帰れるのだと思っていました。
でも、わたあめちゃんは背中の羽で飛ぶことをしません。
ダチョウやペンギンみたいに。羽はあるけど飛べないのかな?
それとも、ケガがちゃんと治ってなくて、飛べなくなってしまったのかな?
ニーナはわたあめちゃんをぎゅっと抱きしめました。
「んんっ」
モカとおふとんにもぐって楽しくおしゃべりして、 いつの間にか寝てしまっていたニーナ。
なんだか不思議な夢を見て、目を覚ましました。
「あれ、夢の続き?」
見慣れた自分の部屋。
となりではモカがすやすや寝ています。
だけど、なにかがちがう。ああそうだ、夜なのに、なんだか青白い光がうっすらと差しこんでいる。
カーテンを閉め忘れたのかな?
モカを起こさないように、そっと身体を起こしてベッドをおりて、窓の外を見ます。
満月の夜です。
きれいな月だな。
そう思いながら何気なく下を見ると。
「えっ」
あまりに驚いて、ニーナは目を大きく見ひらきました。
「ニーナ……?」
ニーナの声で、モカを起こしてしまったようです。
目をこすりながら、モカもベッドからおりてきます。
「モカ、あれ見て」
と、窓の外を指さすニーナ。
「ん? ……えっ!?」
ニーナの家の庭に……、羽の生えた大きな馬……のような犬、がいます。
まるでペガサスです。
真っ白な身体が、カーテンの隙間からの月明りを浴びて、青白く光っています。
「わたあめ……ちゃん?」
ニーナが小さくつぶやくと、わたあめちゃんは、首を上げて、ニーナたちのほうを見あげました。
こっちにおいで。
言葉はないけれど、ニーナは、わたあめちゃんがそういって自分たちを呼んだ気がしたのです。
「モカ、行こう!」
「うん!」
2人はパジャマのまま急いで庭に出ます。
「わたあめちゃん!」
ニーナがかけよると、わたあめちゃんもニーナに顔をくっつけて甘えます。
「これが、わたあめちゃんの本当の姿なんだね」
ニーナはわたあめちゃんのふわふわの首に抱きつきます。
子犬の時の姿と違って、スリムでオオカミみたいな体つきだけれど、可愛い目とふわふわの家は前の姿のままなのです。
「よかった、これでお家に帰れるね……」
ニーナがそういうと、わたあめちゃんはニーナの前でお腹を地面にくっつけて、背中をみせました。
「ねぇ、ニーナ。乗って、っていってるんじゃない?」
「そうなの?」
わたあめちゃんが「そうだよ」と、ほほ笑んだ気がしました。
ニーナとモカは、しばらく顔を見あわせて、それから、よいしょっとわたあめちゃんの背中にまたがります。
わたあめちゃんの真っ白な羽がゆっくりと上下に動いて、ふんわりと庭の土の匂いが立ちのぼってきます。
「と、飛んだ!」
バサッ。バサッ。
わたあめちゃんの翼が羽ばたくたび、地面がぐんと遠くなります。
ニーナのウチの屋根よりも、高くまで上がったところで、今度はビュンと前に進みます。」
「わぁ、きれい」
「鳥になったみたい!」
夜の町を見おろして、ニーナとモカは興奮気味。
夜の空を自由にかけめぐるわたあめちゃんも、とってもうれしそうです。
そうこうしているうちに、ニーナとモカの住む町は、見えなくなって、2人は少しだけ不安な気持ちになってきます。
「わたあめちゃん、どこに行くの?」
ニーナの心細げな声を聞いて、わたあめちゃんは心の中で「しまった」と思ったにちがいありません。
そこからまっすぐ雲のほうに向かい……、夜なのに、他の雲と比べて不思議と明るい大きな雲に突進します。
「え! う、うわぁ~~」
雲は、小さな水や氷の粒でできています。
ニーナとモカは、ほっぺたに氷の粒がいっぱい当たるのを覚悟して、ぎゅっと目を閉じました。
ところが。
つめたい氷の粒どころか、ふんわり温かい空気が2人の頬をなでました。
温かくて、フルーツのようないい香り。
そっと目を開けると、そこは色とりどりのお花畑でした。
空は真っ青。青空に花の色がよく映えます。
さっきまで夜空を飛んでいたのに、ここはいったい……?
ニーナは不思議な気持ちになりましたが、モカは、
「わぁ、きれい」
と大喜びです。
わたあめちゃんは、まっすぐまっすぐ進みます。
小川を越えて、小さな山を越えて、やがて町が見えてきました。
ピンク色や水色、黄色、淡いオレンジ色……。
色とりどりの家が並び、色とりどりの服を着た人たちが歩いています。
まるで夢の中の町みたい。
「やっぱり、雲の上には魔女の国があったんだ」
モカがぽつりとつぶやきます。
「ね。びっくり。あ、見て、あそこ!」
わたあめちゃんが進む先に、大きくて立派な建物が見えます。
まるでガラスでできているような、美しくて荘厳な建物。
わたあめちゃんは、町の上をどんどん進んで、その美しい建物のいちばん高いところにあるバルコニーに降りたちました。
ニーナとモカはわたあめちゃんから降りてほっと一息。
空のお散歩はとっても楽しかったけれど、やっぱり初めてのことは少し疲れます。
すると、すぐに黄色のドレスを着た女の人が3人やってきて、わたあめちゃんの首に抱きついたり、背中をなでたり。
みんな、わたあめちゃんに会えてうれしそう。
「シェルナ! おかえり。帰ってきてくれて良かった!!」
シェルナ! それが、わたあめちゃんの本当の名前なんだ。
そして、やっぱりここがわたあめちゃんのお家なんだ。
無事に帰れてよかったね。
ニーナとモカがそう思って立っていると、黄色いドレスの女の人たちが、にこにこしながら2人に近づいてきました。
ニーナのお母さんが作ったオムライスを仲良く食べて、お風呂に入って、そのあとは、2人がいちばん大好きな、パジャマパーティーです。
いちばんお気に入りのパジャマを着て、ニーナのお部屋のベットに腰かけて、たくさん遊んでおしゃべりするのです。
今日の2人パジャマは、冬用のあったかパジャマ。
なぜって、ニーナの部屋の空気はキンキンに冷えているからです。
寒くてお布団にくるまっているニーナとモカ。
でも2人は寒さなんてへっちゃらです。
だって、かわいいわたあめちゃんが元気いっぱいお部屋の中を走りまわっているから!
「わたあめちゃん、こっちにおいで」
ベットの上からニーナが呼ぶと、わたあめちゃんはぴょこんとニーナのヒザの上に飛のりました。
「すっかり仲良しだね~」
にこにこ顔のモカ。
ニーナも笑顔でうなづいて、「でも……」と顔を曇らせます。
「これからどうしよう。わたあめちゃん、お家にかえしてあげたいけど、どうすればいいのかぜんぜんわからない」
わたあめちゃんは、ケガが治って元気になったら自分でお家に帰れるのだと思っていました。
でも、わたあめちゃんは背中の羽で飛ぶことをしません。
ダチョウやペンギンみたいに。羽はあるけど飛べないのかな?
それとも、ケガがちゃんと治ってなくて、飛べなくなってしまったのかな?
ニーナはわたあめちゃんをぎゅっと抱きしめました。
「んんっ」
モカとおふとんにもぐって楽しくおしゃべりして、 いつの間にか寝てしまっていたニーナ。
なんだか不思議な夢を見て、目を覚ましました。
「あれ、夢の続き?」
見慣れた自分の部屋。
となりではモカがすやすや寝ています。
だけど、なにかがちがう。ああそうだ、夜なのに、なんだか青白い光がうっすらと差しこんでいる。
カーテンを閉め忘れたのかな?
モカを起こさないように、そっと身体を起こしてベッドをおりて、窓の外を見ます。
満月の夜です。
きれいな月だな。
そう思いながら何気なく下を見ると。
「えっ」
あまりに驚いて、ニーナは目を大きく見ひらきました。
「ニーナ……?」
ニーナの声で、モカを起こしてしまったようです。
目をこすりながら、モカもベッドからおりてきます。
「モカ、あれ見て」
と、窓の外を指さすニーナ。
「ん? ……えっ!?」
ニーナの家の庭に……、羽の生えた大きな馬……のような犬、がいます。
まるでペガサスです。
真っ白な身体が、カーテンの隙間からの月明りを浴びて、青白く光っています。
「わたあめ……ちゃん?」
ニーナが小さくつぶやくと、わたあめちゃんは、首を上げて、ニーナたちのほうを見あげました。
こっちにおいで。
言葉はないけれど、ニーナは、わたあめちゃんがそういって自分たちを呼んだ気がしたのです。
「モカ、行こう!」
「うん!」
2人はパジャマのまま急いで庭に出ます。
「わたあめちゃん!」
ニーナがかけよると、わたあめちゃんもニーナに顔をくっつけて甘えます。
「これが、わたあめちゃんの本当の姿なんだね」
ニーナはわたあめちゃんのふわふわの首に抱きつきます。
子犬の時の姿と違って、スリムでオオカミみたいな体つきだけれど、可愛い目とふわふわの家は前の姿のままなのです。
「よかった、これでお家に帰れるね……」
ニーナがそういうと、わたあめちゃんはニーナの前でお腹を地面にくっつけて、背中をみせました。
「ねぇ、ニーナ。乗って、っていってるんじゃない?」
「そうなの?」
わたあめちゃんが「そうだよ」と、ほほ笑んだ気がしました。
ニーナとモカは、しばらく顔を見あわせて、それから、よいしょっとわたあめちゃんの背中にまたがります。
わたあめちゃんの真っ白な羽がゆっくりと上下に動いて、ふんわりと庭の土の匂いが立ちのぼってきます。
「と、飛んだ!」
バサッ。バサッ。
わたあめちゃんの翼が羽ばたくたび、地面がぐんと遠くなります。
ニーナのウチの屋根よりも、高くまで上がったところで、今度はビュンと前に進みます。」
「わぁ、きれい」
「鳥になったみたい!」
夜の町を見おろして、ニーナとモカは興奮気味。
夜の空を自由にかけめぐるわたあめちゃんも、とってもうれしそうです。
そうこうしているうちに、ニーナとモカの住む町は、見えなくなって、2人は少しだけ不安な気持ちになってきます。
「わたあめちゃん、どこに行くの?」
ニーナの心細げな声を聞いて、わたあめちゃんは心の中で「しまった」と思ったにちがいありません。
そこからまっすぐ雲のほうに向かい……、夜なのに、他の雲と比べて不思議と明るい大きな雲に突進します。
「え! う、うわぁ~~」
雲は、小さな水や氷の粒でできています。
ニーナとモカは、ほっぺたに氷の粒がいっぱい当たるのを覚悟して、ぎゅっと目を閉じました。
ところが。
つめたい氷の粒どころか、ふんわり温かい空気が2人の頬をなでました。
温かくて、フルーツのようないい香り。
そっと目を開けると、そこは色とりどりのお花畑でした。
空は真っ青。青空に花の色がよく映えます。
さっきまで夜空を飛んでいたのに、ここはいったい……?
ニーナは不思議な気持ちになりましたが、モカは、
「わぁ、きれい」
と大喜びです。
わたあめちゃんは、まっすぐまっすぐ進みます。
小川を越えて、小さな山を越えて、やがて町が見えてきました。
ピンク色や水色、黄色、淡いオレンジ色……。
色とりどりの家が並び、色とりどりの服を着た人たちが歩いています。
まるで夢の中の町みたい。
「やっぱり、雲の上には魔女の国があったんだ」
モカがぽつりとつぶやきます。
「ね。びっくり。あ、見て、あそこ!」
わたあめちゃんが進む先に、大きくて立派な建物が見えます。
まるでガラスでできているような、美しくて荘厳な建物。
わたあめちゃんは、町の上をどんどん進んで、その美しい建物のいちばん高いところにあるバルコニーに降りたちました。
ニーナとモカはわたあめちゃんから降りてほっと一息。
空のお散歩はとっても楽しかったけれど、やっぱり初めてのことは少し疲れます。
すると、すぐに黄色のドレスを着た女の人が3人やってきて、わたあめちゃんの首に抱きついたり、背中をなでたり。
みんな、わたあめちゃんに会えてうれしそう。
「シェルナ! おかえり。帰ってきてくれて良かった!!」
シェルナ! それが、わたあめちゃんの本当の名前なんだ。
そして、やっぱりここがわたあめちゃんのお家なんだ。
無事に帰れてよかったね。
ニーナとモカがそう思って立っていると、黄色いドレスの女の人たちが、にこにこしながら2人に近づいてきました。