まほうどうぶつのお医者さん
8
「ニーナ、かわいい!」
「モカもすーっごくかわいいよっ」
ニーナとモカはお互いに褒めあって、ニヤニヤ。
無理もありません。
だって、今の2人は、まるで本物のプリンセスのよう。
ニーナはピンク色のふわりとしたシルエットのドレス。
モカは薄い紫色の、お花がたくさんついたドレス。
靴だって、キラキラとして、まるでシンデレラみたい。
髪の毛もくるくるに巻いてもらい、うっすらメイクもしてもらいました。
こんなの、興奮しないわけにはいきません。
「しーっ。女王様のお出ましですよ」
「はいっ」
2人はあわてて口を閉じます。
そう。ここは、女王様に謁見するための広間。
女王様はニーナとモカになにかお話があるそうで、そのために2人は黄色いドレスの人たちにこうやってドレスアップしてもらったのです。
女王様って、どんな人かな。
ドキドキしながら2人が待っていると、コツコツと足音が聞こえてきました。
「ニーナちゃん、モカちゃん」
優しい声とともに、女王様が現れました。
この方が、魔法の国の女王様なんだ……!
ニーナとモカは、女王様のあまりの美しさに思わず見とれてしまいます。
栗色の長い髪に、大きな青い宝石が輝くティアラ。
水色のロングドレスには、雪の結晶のようなものがキラキラと光っています。
そして、やさしい目、ピンク色のくちびる。
そして、そんな女王様の横に、わたあめちゃん……じゃなくて、シェルナちゃんがぴったりくっついています。
「ニーナちゃん、モカちゃん。シェルナを助けてくれてほんとうにありがとうございます」
「いえ、そんな……」
「シェルナは私のたいせつなたいせつなお友だちなの。ちいさいころからずっといっしょだったのよ。このお城にはたくさんの動物が住んでいるけれど、この子はとにかくいたずらっ子で……、お城を抜け出して空で遊んでいたところ、なにかが当たって翼をケガしてここに帰れなくなったんですって」
「そうだったんですか」
「そうなの。ニーナちゃんとモカちゃんが助けてくれなかったら、今ごろどうなっていたか……。ほんとうにありがとう」
女王様がいとしそうにシェルナちゃんをなでて、シェルナちゃんはとってもうれしそうな表情。
よかった。ほんとうによかった。
女王様とシェルナちゃんが幸せそうなのを見て、ニーナもうれしくなります。
「少し調べたのだけれど、人間の世界はすごいわね。元気のない動物やケガをした動物を、知識で助けることができるのね」
「え。ここでは、違うんですか?」
「ええ。ここは魔法の国だから、病気やケガは魔法で治すのよ」
そっか、とニーナは思います。
でも、魔法で治せるなら、そのほうがぜったいいい!
だって、魔法ならきっと、どんな病気やケガだって治せるはずです。
「いいな。私も魔法を使えるようになりたいです。そうしたら、もっとたくさんの動物を助けてあげられるのに」
お父さんの動物病院にやってくる動物たちの中には、どんなにがんばって治療しても助けてあげられない動物たちもいます。
そんなとき、ニーナが「私に魔法が使えたらな」と思ったことは何度もありました。
「そうね。ケガや病気を治す魔法はあることにはある。でもね、その魔法は、魔法使いの寿命と交換なの」
「えっ」
ニーナは、背中がぞくっとしました。
それって、魔法でだれかのケガや病気を治したら、自分の寿命がちょっと縮まるってこと!?
なんだかとっても恐ろしい魔法みたいです。
「だから、全ての動物を助けてあげたいけれど、助けられないこともあるの……」
女王様はうつむきながらそういいます。
その顔は、とてもくやしそう。
でも、つぎのしゅんかん、女王様はきぜんとしたを取り戻して、ニーナとモカに真剣なまなざしを向けました。
「それで、ニーナちゃんとモカちゃんにお願いがあるの」
「はい」
「この国の、動物のお医者さんになってもらえないかしら」
「え! わたしたちが、ですか!」
思いがけない話に、ニーナとモカはびっくりして顔を見あわせます。
「でも、わたしたちはまだこどもで、知識も経験もないし」
ニーナがそういうと、女王様は首を横に振ります。
「いいえ、そんなことはないわ。おとなだってこどもだって関係ない。シェルナがいうの。ニーナちゃんとモカちゃんはならだいじょうぶだ、って。わたしもそう思う。」
シェルナちゃん……。
女王様の横で、シェルナちゃんもまっすぐにニーナとモカを見つめています。
そんなこと、わたしにできるかな。
自信ないよ。
けど……。
女王様とシェルナちゃんを交互に見て、ニーナは大きく息をすって、吐きだします。
だれかを助けたい気持ちは、きっと同じ。
「わかりました。やります!! いいよね、モカ!」
「もちろん! ニーナが決めたなら、わたしはとことんつきあうよ!」
「ありがとう!」
女王様がぱぁっと明るくほほえみました。
黄色いドレスの女の人たちもわぁっと歓声をあげます。
これからどうなるのかな。
どんな動物たちとの出会いがまっているのかな。
わたしはその子たちをちゃんと助けてあげられるのかな。
ちょっぴり不安。
だけどわくわくします。
だって、だれかが喜んでくれるのって、最高だから!
「よーし、これからがんばるぞー!」
ニーナはお城の窓から外を見あげました。
青い空には、いつもより大きく見える白い満月が、ぽっかりと浮かんでいました。
「モカもすーっごくかわいいよっ」
ニーナとモカはお互いに褒めあって、ニヤニヤ。
無理もありません。
だって、今の2人は、まるで本物のプリンセスのよう。
ニーナはピンク色のふわりとしたシルエットのドレス。
モカは薄い紫色の、お花がたくさんついたドレス。
靴だって、キラキラとして、まるでシンデレラみたい。
髪の毛もくるくるに巻いてもらい、うっすらメイクもしてもらいました。
こんなの、興奮しないわけにはいきません。
「しーっ。女王様のお出ましですよ」
「はいっ」
2人はあわてて口を閉じます。
そう。ここは、女王様に謁見するための広間。
女王様はニーナとモカになにかお話があるそうで、そのために2人は黄色いドレスの人たちにこうやってドレスアップしてもらったのです。
女王様って、どんな人かな。
ドキドキしながら2人が待っていると、コツコツと足音が聞こえてきました。
「ニーナちゃん、モカちゃん」
優しい声とともに、女王様が現れました。
この方が、魔法の国の女王様なんだ……!
ニーナとモカは、女王様のあまりの美しさに思わず見とれてしまいます。
栗色の長い髪に、大きな青い宝石が輝くティアラ。
水色のロングドレスには、雪の結晶のようなものがキラキラと光っています。
そして、やさしい目、ピンク色のくちびる。
そして、そんな女王様の横に、わたあめちゃん……じゃなくて、シェルナちゃんがぴったりくっついています。
「ニーナちゃん、モカちゃん。シェルナを助けてくれてほんとうにありがとうございます」
「いえ、そんな……」
「シェルナは私のたいせつなたいせつなお友だちなの。ちいさいころからずっといっしょだったのよ。このお城にはたくさんの動物が住んでいるけれど、この子はとにかくいたずらっ子で……、お城を抜け出して空で遊んでいたところ、なにかが当たって翼をケガしてここに帰れなくなったんですって」
「そうだったんですか」
「そうなの。ニーナちゃんとモカちゃんが助けてくれなかったら、今ごろどうなっていたか……。ほんとうにありがとう」
女王様がいとしそうにシェルナちゃんをなでて、シェルナちゃんはとってもうれしそうな表情。
よかった。ほんとうによかった。
女王様とシェルナちゃんが幸せそうなのを見て、ニーナもうれしくなります。
「少し調べたのだけれど、人間の世界はすごいわね。元気のない動物やケガをした動物を、知識で助けることができるのね」
「え。ここでは、違うんですか?」
「ええ。ここは魔法の国だから、病気やケガは魔法で治すのよ」
そっか、とニーナは思います。
でも、魔法で治せるなら、そのほうがぜったいいい!
だって、魔法ならきっと、どんな病気やケガだって治せるはずです。
「いいな。私も魔法を使えるようになりたいです。そうしたら、もっとたくさんの動物を助けてあげられるのに」
お父さんの動物病院にやってくる動物たちの中には、どんなにがんばって治療しても助けてあげられない動物たちもいます。
そんなとき、ニーナが「私に魔法が使えたらな」と思ったことは何度もありました。
「そうね。ケガや病気を治す魔法はあることにはある。でもね、その魔法は、魔法使いの寿命と交換なの」
「えっ」
ニーナは、背中がぞくっとしました。
それって、魔法でだれかのケガや病気を治したら、自分の寿命がちょっと縮まるってこと!?
なんだかとっても恐ろしい魔法みたいです。
「だから、全ての動物を助けてあげたいけれど、助けられないこともあるの……」
女王様はうつむきながらそういいます。
その顔は、とてもくやしそう。
でも、つぎのしゅんかん、女王様はきぜんとしたを取り戻して、ニーナとモカに真剣なまなざしを向けました。
「それで、ニーナちゃんとモカちゃんにお願いがあるの」
「はい」
「この国の、動物のお医者さんになってもらえないかしら」
「え! わたしたちが、ですか!」
思いがけない話に、ニーナとモカはびっくりして顔を見あわせます。
「でも、わたしたちはまだこどもで、知識も経験もないし」
ニーナがそういうと、女王様は首を横に振ります。
「いいえ、そんなことはないわ。おとなだってこどもだって関係ない。シェルナがいうの。ニーナちゃんとモカちゃんはならだいじょうぶだ、って。わたしもそう思う。」
シェルナちゃん……。
女王様の横で、シェルナちゃんもまっすぐにニーナとモカを見つめています。
そんなこと、わたしにできるかな。
自信ないよ。
けど……。
女王様とシェルナちゃんを交互に見て、ニーナは大きく息をすって、吐きだします。
だれかを助けたい気持ちは、きっと同じ。
「わかりました。やります!! いいよね、モカ!」
「もちろん! ニーナが決めたなら、わたしはとことんつきあうよ!」
「ありがとう!」
女王様がぱぁっと明るくほほえみました。
黄色いドレスの女の人たちもわぁっと歓声をあげます。
これからどうなるのかな。
どんな動物たちとの出会いがまっているのかな。
わたしはその子たちをちゃんと助けてあげられるのかな。
ちょっぴり不安。
だけどわくわくします。
だって、だれかが喜んでくれるのって、最高だから!
「よーし、これからがんばるぞー!」
ニーナはお城の窓から外を見あげました。
青い空には、いつもより大きく見える白い満月が、ぽっかりと浮かんでいました。