結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
再び


悪夢のような結婚式の日から二年が過ぎた。

彩奈は国際秘書検定ファイナルまで合格し、誠子の派遣会社に登録している。

ある日突然、自分の運命がひっくり返る経験をした彩奈は一か所にとどまるのが怖かった。
色々な業種で経験を積んでスキルを身につけたいし、精神的に強くなりたいと思っている。

エクセレント誠から、弁護士事務所や食品会社に短い期間派遣されてきた。
この春からは、いよいよ一年契約での仕事を受けることになった。

「井口さんには早瀬М&Aパートナーズに行ってもらうわ」

「え?」

誠子の言葉を聞いて、思わず声を上げてしまった。

「どうかした?」

「いえ」

早瀬М&Aパートナーズの社長とは、一年以上前にチョッと関わったくらいだ。
彩奈のことなんて忘れているかもしれないし、いきなり社長秘書になれるわけがない。
それなのに大げさに騒ぐことはないと口をつぐんだ。

「すみません。大きな会社だなと思って」
「そうなの。急成長しているから、なかなか人材の確保が難しいみたい」

早瀬М&Aパートナーズで彩奈が認められたら、エクセレント誠としても今後につながるはずだ。
誠子が彩奈を選んでくれたのなら、ぜひ期待に応えたい。

「わかりました。頑張ります」
「いつも通りでいいよ、彩奈は」

そう言って、誠子はクスクス笑った。
彼女は、一生懸命になると食事も忘れてしまう彩奈のことを一番よくわかっているのだ。



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