転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って！

11・ティナの初恋イベント

　ーー翌日の放課後。
　1人で廊下を歩くユキリは、状況を整理するために思いを巡らせていた。

(ルアーナ公爵令嬢は、ロンドと殿下が好き……？)

　考え事をしていたせいか。
　前方からやってくる男子生徒達に、キャーキャーと騒ぐ女子生徒達がいることに気づけず――その集団の横を通り過ぎた。

「お疲れ様」
「姉さん」

　輪の中心にいる2人組が声をかけるが、足を止めることなく前に進む。
　その瞬間、取り巻きの女生徒達が一斉に目の色を変えてこちらを睨みつけてきた。

(え、何？　怖……。ロンドは、ティナにゾッコン……）

　ユキリは怯えながら、心ここにあらずな様子で再び思考を巡らせる。

「ねぇ、あれって……」
「ラクア男爵令嬢でしょう？」
「殿下の挨拶を、無視するなんて……！」

　声をかけた相手が誰かを知っている女子生徒達は、不敬だと口々に囁き合う。

「俺の姉さんへ聞こえるように、文句を言うなど……」
「ちょっと、ごめんね」

　そんな集団を困ったように見つめたマイセルは、この場をユイガに任せて輪の中から自分を出すように命じた。

(現段階ではティナは、ロンドの一番好感度が高いはず……！)