転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
18・事件の裏側(ティナ)
(ほんとに、こんなことをしてもいいのかな……?)

 ティナはドキドキと高鳴る心臓の鼓動まで、ユキリとマイセルに筒抜けなのではと怯えながら――テーブルの上に並べられた食事を、じっと眺めていた。

『ユキリは君を、一番大切にしている』

 ティナは殿下から伝えられた言葉を思い出す。

 ある日聖女として覚醒したユキリの弱みが、自分で……。
 一時期酷かったいじめは、ユキリとティナを標的にしていたもの。
 そして犯人は、ほとぼりが冷めた頃に再び牙を向くのだと――。

『これがあれば、何があっても絶対に大丈夫だ』

 マイセルはティナに、魔法を使って作られた小型の盗聴器を手渡した。
 リアルタイムで送受信が可能な代物だ。

 問題が起きれば、どれほど離れた所にいても。すぐにロンドが助けに入ってくれると言う。

(騙し討ちみたいで、卑怯だよね……)

 だが――。
 心優しいティナは、この装置を使うことに懐疑的だった。

 悪事を働く人間を罰するには、証拠が必要だとわかっていても――本当にその罪を白日の下へ晒してもいいのかと、迷っていた。

(犯人さんにも、事情があるだろうし……)

 被害を受けた2人が黙っていれば、何事もなかったことにできるのなら――今まで通り黙って口を閉ざしているべきなのではないかと、考えていたからだ。

「ごきげんよう、ティナ」

 ――だから。

 1人でいる時にランカから話しかけられた直後、引き攣った笑みを浮かべて応対する。
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