転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
19・積年の恨み、晴らします。
(これがティナと、ランカの顛末なわけだけど……)

 ユキリはその一部始終を、耳につけたイヤホンで聞いていた。

 ルアーナ公爵令嬢が毒入りの果実酒をティナへ飲ませたことを、この場に集まった生徒達に知らしめなければならないが――残念ながら、証拠がない。

 どうやってそれを調達するか、迷いを生じさせていた。

(果実酒のグラスに、直接入れる暇はなかったはず……)

 あたりを見回して視線をさ迷わせていたユキリは、ザルツが立っているテーブルの隣に、ワインボトルが置かれているのに気づく。

(あれかな……?)

 開封済みのそれは、中身が四分の一減っていた。

(毒入りと証明する方法は、よくわかんないけど……)

 ユキリがそれをじっと見つめているのに、気づいたのだろう。

「ユイガ。ちょっといいかい?」
「なんだ」

 マイセルは弟を呼び寄せ、何やらひそひそと会話を始める。
 積年の恨みを晴らすちょうどいい機会だと、ユイガをけしかけているのなら――。

(ここで一気に、蹴りをつける……!)

 役者が揃った以上、ここで舞台の幕を開けなくてどうすると言うのだ。
 覚悟を決めたユキリは、自分がまるで名探偵にでもなった気分でルアーナ公爵令嬢へ戦いを挑んだ。
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