転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
20・聖女としての生活
「お待ちしておりました。聖女様」

 恋愛学園の敷地から飛び出した瞬間、神官に声をかけられた。

「ははは……。ごきげんよう……」

 どう応えていいかわからず曖昧に笑っておけば、ユキリは馬車に載せられ――あれよあれよと言う間に、神殿へと連れ去られてしまった。

(疲れちゃったな……)

 ルアーナ公爵令嬢に罪を償わせ、どうにか恋愛学園から追放することに成功したが……ここからが、問題だった。

 ユキリは聖女として暮らす部屋に置かれたベッドに細い身体を投げ出すと、恋愛学園に残してきた人々を想う。

(殿下との別れは済ませたけど……。ユイガには何も言わずに出て来ちゃったもん……。きっと、怒ってるよね……)

 シスコンすぎて鬱陶しいと思う時もあるが、彼は双子の弟だ。
 これほど長く離れて暮らす経験がなかったせいか。
 どうにも違和感が拭えない。

(ここで1人淋しく、生涯を終えるつもりはないんだけど……)

 これからどうやってここから逃げ出し、今まで通りの日常に戻ればいいのだろうか。
 ユキリは有り余っている時間を使って、必死に考えた。
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