転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
4・聖女覚醒
 ――お茶会で殿下と初めて会話してから、1か月後。
 ラクア男爵家の娘として暮らすのにようやく馴れてきたころ、家族みんなで城下町に買い物へ出かけた。

『俺と姉さんが引き離せないほど固い絆で結ばれていると、あいつに思い知らせないと……』

 そう仄暗い瞳をした弟に、お揃いのアクセサリーを買おうと提案されたからだ。

(アクセサリーと言えば……。作中でユイガがとても大事にしているブローチがあったような……?)

 ユキリの朧気な記憶は、どうやら正しかったらしい。

「これなんかどうだろうか。姉さんの瞳の色と、同じ……」
「うん。いいと思うよ! ユイガに似合うと思う!」

 彼が選んだのは、青薔薇の装飾品だった。
 それは作中でよく目にするものと一致している。

(これから6年間も大事にするなんて、物持ちがいいなぁ……)

 ユキリが感心した様子で満面の笑みを浮かべると、弟は訝しげな視線をこちらに向けた。

「何を言っているんだ。これは、姉さんが胸元に身につけるんだよ」
「え……? でも……」
「俺はこっちにする」

 ユイガが手に取ったのは、黒薔薇のコサージュだ。
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