転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
1・王太子に求婚されまして
「ラクア男爵家の娘、ユキリと申します。今年で、8歳になりました」
自分の口から聞き馴染みのない声が聞こえ、違和感を感じてピタリと動きを止める。
(ん?)
子ども用のドレスを身に纏い、両手で裾を摘んでお辞儀をし終えた雪莉は、顔を上げて驚愕した。
(はぁ……っ!?)
目の前に、恋愛学園 恋♡ラヴァーズの攻略対象――金色の光り輝く髪を揺らし、澄んだ泉のような水色の瞳を持つ。
エインズ王国の王太子、マイセル・エンズウェイがいたからだ。
(な、なんでマイセルがここに!? と言うか、ラクア男爵家って何!?)
何が一体どうなっているのか、さっぱり理解できない。
頭の中で大混乱に陥ると、快活な印象を与える水色の瞳を優しく綻ばせた殿下から自己紹介を受けた。
「僕はマイセル・エンズウェイ。年齢は、君と同い年。この国の、王太子だよ」
彼と関係のない人間が王族の名を騙るなど絶対にありえない。
恋ラヴァで登場する立ち絵よりも幼いが、目の前にいる少年は明らかにマイセル本人だ。
「君のことはラクア男爵令嬢ではなくて、ユキリと呼びたいんだけど……。いいよね」