転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
5・転生悪役令嬢の企み(ランカ)
 ルアーナ公爵家のランカは、目の前の光景に愕然とした。

(誰ですの!? あの女は!)

 王太子のハートを射止めたのは、自分ではなく――存在感のない茶髪を短く切り揃え、吸い込まれそうな黒い瞳を持つ少女だと気づいたからだ。

(殿下の婚約者に相応しいのは、公爵家の娘として生まれ変わったこのわたくし! ルアーナ公爵家のランカですのに……!)

 心の中で彼女に対する憎悪を滾らせると、ここに至るまでの経緯を振り返る。

 ランカには成神蘭花(なるかみらんか)として生きた、前世の記憶がある。
 恋愛シミュレーションゲーム恋愛学園♡恋ラヴァーズをこよなく愛し、当選したファンしか観覧できなかったステージイベントにも出席するほどの重度なファンだった。

(確か、ここでしか聞けない裏話の中に……。殿下にかかわる話があったはずですわ……!)

 ランカは必死に思考を巡らせ、その記憶を呼び起こす。

『マイセルにはかつて、ティナよりも大切な女の子がいたんです。ただ、本編が始まる前に馬車が横転して、亡くなってしまい……。彼は彼女の代わりに、ヒロインを愛したなんて話が合ったんですけど……。没になりましたねぇ』
『あれ? でも、ユイガの設定は生きていますよね? お姉さんの形見である青薔薇のブローチを、胸元につけている……』
『ああ、キャラデザを発注したあと没になったので……。今さら変更もできなくて……』
『それは、大変でしたね』
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