有能でイケメンクズな夫は今日も浮気に忙しい〜あら旦那様、もうお戻りですか?〜
四話〜初夜の浮気〜
「ユーリウス様、宜しいんですか?」
「何がだ」
「だって、今夜は初夜なんですよね?」
「私には関係ない」
身体を起こすとベッドの縁に座り乱れた髪を掻き上げた。サイドテーブルに置かれた葉巻を掴み、小さな燭台の蝋燭で火をつける。
「ねぇ奥様って、どんな方?」
裸体にシーツを巻き付けただけの彼女は、ユーリウスの背中に抱き付き甘ったるい声を出すが、つい先程まで嬌声を上げていた為か声は少し掠れていた。
「平凡で地味な、芋っぽい娘だ」
「芋っぽいなんて、ふふ、嫌ですわ〜。そんな風に仰ったら、奥様がかわいそうです〜」
金色の長い髪と色白で艶っぽいこの女性の名前はフラヴィ・ドニエ。侯爵令嬢であり、ユーリウスの幼馴染だ。そして沢山いる身体の関係がある女性達の一人でもある。
「別に興味などないから、どうだっていい」
ある日突然父が勝手に結婚を決めてきた。
一応伯爵家の令嬢らしいが、田舎貴族らしく平凡でつまらない風貌だった。
あれ程、芋っぽいとの表現が似合う人間は中々いないだろう。
「それなら良かったです」
「どういう意味だ?」
「私、ユーリウス様が結婚したって聞いて、とっても悲しかったんです。もう私達のユーリウス様じゃなくなっちゃうんじゃないかって」
その声色だけで判断するなら、心から悲しんでいるように思えるが嘘だ。
彼女はユーリウスが結婚しようとしまいと興味はないだろう。
何故ならフラヴィは以前、ユーリウスとの結婚を拒否しているからだ。
正直、フラヴィへ愛情はないが、昔から一緒にいるので情はある。それに彼女はユーリウスの女好きに理解を示してくれているので面倒でもない。
故にどうせ誰かと結婚しなくてはならないのなら彼女で構わないと思っていたが、彼女はそうではなかった。
断られた時は正直、驚いてしまった。
だが未だにこうして関係を続けているのは、身体の相性がいいからなのか或いはただの惰性に過ぎないのかは分からない。
「まさか、この私が一人の女性で満足する筈ないだろう。それは君も良く理解している筈だ。それにこの結婚は父が勝手に決めたもので、私はあんな田舎娘、妻とは認めていない」
「ふふ、流石ユーリウス様、素敵ですわ。これからも、ずっと私達のユーリウス様でいて下さいね? 誰かのものになんて、ならないで……」
彼女のその言葉に自嘲する。
これまで様々な女性達と関係を持ってきた。それは現在進行形で続いている。ただどんなに美しく魅力的な女性を抱いても満足出来ない。
ユーリウスが女性と抱き合う理由は、その瞬間だけは満たされるからだ。だが、終わった後はいつも虚しさだけが残り心が酷く渇く。どうにかその渇きを埋めようとまた女性を欲する。延々とその繰り返しだ。
「フラヴィ」
吸っていた葉巻を灰皿に置くと、背中にある温もりを引き寄せた。
柔らかな頬に触れ啄むようなキスをする。
「もう一度、抱きたい」
「ユーリウス様っ……」
彼女を組み敷き、またベッドへと身体を沈めた。