宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

息苦しい宮廷を抜け出して

最悪だ。
またあの男がいるなんて。
フィロメナは背筋に嫌な汗が
ツーッと流れるのを感じた。
オルランドの目がないことを良いことに
フィロメナに執拗に言い寄ってくる
どこぞの国の外務大臣。
嫌いすぎて顔も見たくない男だ。

幸い晩餐の席は離れていたので
フィロメナは安心した。
両隣のゲストは話題が豊富で会話も弾み、
久しぶりに楽しい食事ができた。
問題はこれから。
今回はダンスパーティー形式になっている。
招かれたゲストが若手の外交官などが多いので
出会いの場も兼ねてのことらしい。
こういう場でオルランドが
エスコートしてくれたことなどないので、
(オルランドはいつもゲストと歓談している)
フィロメナは最初しばらくダンスを観たあと
人知れずフェードアウトして自室に戻っていた。

今日もそうするつもりだった、、、のに。

「せっかくですから、一曲どうですか?」
そろそろ帰ろうかなと思ったフィロメナの腕を
誰かがふいに掴む。
そしてこの大嫌いな声で
誰なのか嫌でもわかる。
「せっかくのお誘い、申し訳ございませんが少々疲れておりますので。」
努めて穏便に断りの返事を入れる。
でも、
こんなことであっさり引き下がってはくれないのだ、
このセクハラ男は。
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