■□ 死 角 □■
L事件
■L事件
朝7:00にセットしたアラームが鳴るまで私は眠り続けた。時間にして1時間ぐらいは寝られただろうか。食欲なんてまるでないから朝食は摂らず、顔を洗って歯を磨き化粧をする……
けれどいつも使っている鏡を使う気には到底ならなかった。私が普段持ち歩いている丸いコンパクトで簡単にメイクを施し、髪を乱雑にまとめて服を着てるときになってようやく少しだけ落ち着いてきた。
テレビはバラエティ番組から朝のワイドショーに切り替わっていて、しかし陽菜紀の事件は触れられなかった。こうやって……世間から忘れられていくのだろうか。
ところで昨日みたあれは陽菜紀の幽霊だったのだろうか―――
私は壁に掛けてあるカレンダーを見た。もう陽菜紀の初七日は終わっている筈。
きっと疲れていたのだ。色々あって。出かけるときにバッグにスマホを入れる際、何となくメールをチェックする。“あれ以来”陽菜紀からのメールはない。そのことにほっとする。
でも、私が見た陽菜紀の言葉、あれが本心ならば、陽菜紀も鈴原さんのこと―――……
二人は両想いだったと言うわけか。だから陽菜紀は唯一心を許していた鈴原さんにご主人の浮気を相談したのだ。納得……
もし……陽菜紀がご主人を選ばなかったら、もしかして陽菜紀には違う未来があったのかもしれない。殺されたりしなかったかもしれない。
そう考えるといたたまれなくなった。
どこで軌道が変わってしまったのだろう。
考えても、今の私に答えなんて出せない。