■□ 死 角 □■
優子の自尊心

■優子の自尊心


優ちゃんが指定したのは街中にあるカフェだった。ランチタイムだったけれど土曜日と言うことで人はまばらだ。優ちゃんは禁煙室の奥まった席に座っていた。
最初優ちゃんを見つけられなかった。優ちゃんは濃い目のサングラスにマスクと言う姿だったのだ。声を掛けられなかったら分からなかっただろう。

「どうしたの……その格好」と不思議に思って聞くと、優ちゃんはサングラスを外しながら、その奥にある二つ眼を鋭くさせて険悪な口調で切り出した。

「あんたでしょ。これやったの」

前置きもなく、バサリと何枚かの写真をテーブルに放り投げられ、わけも分からず私はその一枚に恐る恐る手を伸ばした。それは、優ちゃんと……男の人が腕を絡め、いかにも、と言うラブホテルに入って行くところだった。何なの……この写真。

その男の人の顔を見て―――

え――――……?

私は違うショットの写真を慌てて手に取った。


「これ―――
陽菜紀のご主人―――……?」


優ちゃんが、陽菜紀のご主人の浮気相手―――……!?
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