かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
第三章/世界一忙しい都市
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三ヶ月後、都内の老舗ホテルにて、久我透・辻原桜帆の結婚式が執り行われた。
古風な神前式であり、その後宴会場に移っての披露宴も、両家の家族と近しい親族のみという慎ましいものだった。
久我家の社会的立場からすると異例かもしれないが、これはわたしたち二人の希望だった。
わたしは白無垢と角隠しに身をつつみ、三献の儀や祝詞奏上を間違えないようにと手順や台詞を頭の中で何度もなぞっていた。
衣装のどっしりした重みを全身で感じながら、自分はなにを負ってしまったのだろうと思う。
もう引き返せないところに来てしまった———
ちらりと視線を流して、隣に立つ透さんを見る。
紋付の羽織袴姿の彼は、いつにも増して凛々しい姿だ。
わたしの願いどおり、彼はわたしの母と祖母には恋愛結婚だと話を通してくれた。
実家に挨拶に訪れ、突然の話に仰天する二人に「お嬢さんを僕にください」「大切にします」と言って頭を下げたのだ。
あの透さんの言葉と態度を、信じたいと思う自分がいる。
三ヶ月後、都内の老舗ホテルにて、久我透・辻原桜帆の結婚式が執り行われた。
古風な神前式であり、その後宴会場に移っての披露宴も、両家の家族と近しい親族のみという慎ましいものだった。
久我家の社会的立場からすると異例かもしれないが、これはわたしたち二人の希望だった。
わたしは白無垢と角隠しに身をつつみ、三献の儀や祝詞奏上を間違えないようにと手順や台詞を頭の中で何度もなぞっていた。
衣装のどっしりした重みを全身で感じながら、自分はなにを負ってしまったのだろうと思う。
もう引き返せないところに来てしまった———
ちらりと視線を流して、隣に立つ透さんを見る。
紋付の羽織袴姿の彼は、いつにも増して凛々しい姿だ。
わたしの願いどおり、彼はわたしの母と祖母には恋愛結婚だと話を通してくれた。
実家に挨拶に訪れ、突然の話に仰天する二人に「お嬢さんを僕にください」「大切にします」と言って頭を下げたのだ。
あの透さんの言葉と態度を、信じたいと思う自分がいる。