かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

第六章/コスモポリタン



アメリカで暮らしていると———少なくとも透さんのように社会の一員として仕事をしている限り———社交は必須になってくる。
仕事であれプライベートであれ、人と会う、話す、食事をともにする、家に招く、招かれるというのが日常生活に組み込まれているのだ。

彼の妻であるからには、わたしもいつまでも英語に自信が…と逃げてもいられない。
ちょうどいい機会があると、透さんが旧友とのディナーを提案してくれた。
「すごく話が面白くて愉快なやつだから、聞いていればいいさ」とのことだ。

友人は独身だから一人で来るが、三人より四人のほうがバランスがいいということで櫂さんも加わることになり。わたしは本当に気楽な心持ちでディナーに参加することができた。

そして透さんおすすめのイタリアンレストランでのディナーは、意外なほど心はずむひとときになった。

ティムという名のその友人は、透さんの大学時代からの付き合いで、今は商社で働いているという。
世界各国の現地法人に赴任しているという彼のエピソードが、とにかくめっぽう面白いのだ。
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