かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

第八章/One for all , all for one

季節は巡り、秋から冬になった。
思えばニューヨークに来たばかりの頃は、コートを着こんで寒さに震えながら外を歩いていたものだ。

またコートの時季になったのかとしみじみ思う。
ニューヨークは日本と同じで四季をしっかり感じられるので、そこは日本人として嬉しいところだ。
やっぱり春は桜が見たくなるし、秋には紅葉を楽しみたい。

手術後、約六週間でトモミ先生の腕のギブスはようやく外れた。六週間ものあいだギブスに覆われていた腕である。
ミイラのように痩せ細り皮膚の(しな)びた腕を目にして、とても自分のものとは思えず、涙がこぼれたという。
それまで十全に健康にあふれて、それを活かして職業にしていた人なら、なおのことショックは大きいだろう。

ギブスが取れたのはまだ第一段階で、これからリハビリがあり、縮んでしまった肘の関節部分の皮膚を伸ばすために痛みに耐えて曲げ伸ばし…と先は長いのだ。
ちなみに埋め込んでいる金属が抜けるのは、早くても一年後だという。

わたしは変わることなく、グリニッチ・ビレッジのアパートに足を運んでサポート活動をしていた。
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