誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~

引っ越すちょっと前

 


「この室内干し尖ってやがるっ」
と叫ぶ明巳の夢を見ながら、すやすやと眠っていたほたるは、明巳の悲鳴で目を覚ました。

「ど、どうしたんですか?」
と起き上がり訊くと、先に飛び起きていた明巳が真っ青な顔で言う。

「……天井の大きな手がコロッケを」

 ……私の夢よりくだらなさそうだな。

 ほたるは再び、目を閉じようとした。

 今ならまだ、すぐ眠れそうだったからだ。

 だが、横になろうとした肩をガッとつかまれる。

「あの天井の手が、俺以上に大きくて立派なコロッケを作ったんだっ」

「あ、そうなんですか」
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