うちの鬼畜社長がお見合い相手で甘くて困る
2
海龍Side
「で? あんた、いつ結婚すんの?」
――またかよ。
姉・小笠原 紗月、38歳。
仕事はできる、見た目も派手、美意識もやたら高い。
昔から何かと俺の人生に口を出してきた。
「結婚なんか、別にいいだろ」
そう答えても、姉はまったく引かない。
「いい年なんだから、真剣に考えなさい。……まさか、誰もいないとか?」
――うっとうしい。
思わず、口から出た。
「会社に気になるやつがいる」
「へぇ?」
興味津々な目を向けられて、引っ込みがつかなくなった。
仕方なく、ふと頭に浮かんだ名前を出した。
「広報部の……平泉 凪」
自分でも驚くくらい、感情のない口調だった。
可もなく不可もなく、俺と話すといつも緊張している。
地味な格好、落ち着いた声、自己主張もない。
特に印象に残るような女じゃない。
ただ――
「無害」で「ちょうどいい」と思った。
姉貴の美意識じゃ、絶対に“ナシ”だろう。
それで引いてくれれば、もうそれで終わる話だった。
──なのに。
数日後、姉から突然届いた一通のメッセージ。
> 『日曜、いつもの料亭に行って。相手はいい子だから、ちゃんと礼儀正しくするように』
勝手にお見合いをセッティングしてきた。
(はぁ?)と思ったが、まあどうせ流れで断ればいい。
そう思って、適当に向かった。
……まさか、あいつが来るとは。
凪が、そこにいた。
いつもの地味なスーツじゃなく、
淡い色のワンピースに髪を巻いて。
いつもより表情がやわらかい。
(……おい、姉貴……)
俺は席につきながら、あえて何も言わなかった。
凪が名前を名乗ったときも、黙っていた。
俺の名前を聞いて、明らかに戸惑っていたけど。
――さて。
目の前で不安そうに笑う彼女の仕草に、
ふいに、口元が緩んだ。
“無害”で“地味”な女。
「で? あんた、いつ結婚すんの?」
――またかよ。
姉・小笠原 紗月、38歳。
仕事はできる、見た目も派手、美意識もやたら高い。
昔から何かと俺の人生に口を出してきた。
「結婚なんか、別にいいだろ」
そう答えても、姉はまったく引かない。
「いい年なんだから、真剣に考えなさい。……まさか、誰もいないとか?」
――うっとうしい。
思わず、口から出た。
「会社に気になるやつがいる」
「へぇ?」
興味津々な目を向けられて、引っ込みがつかなくなった。
仕方なく、ふと頭に浮かんだ名前を出した。
「広報部の……平泉 凪」
自分でも驚くくらい、感情のない口調だった。
可もなく不可もなく、俺と話すといつも緊張している。
地味な格好、落ち着いた声、自己主張もない。
特に印象に残るような女じゃない。
ただ――
「無害」で「ちょうどいい」と思った。
姉貴の美意識じゃ、絶対に“ナシ”だろう。
それで引いてくれれば、もうそれで終わる話だった。
──なのに。
数日後、姉から突然届いた一通のメッセージ。
> 『日曜、いつもの料亭に行って。相手はいい子だから、ちゃんと礼儀正しくするように』
勝手にお見合いをセッティングしてきた。
(はぁ?)と思ったが、まあどうせ流れで断ればいい。
そう思って、適当に向かった。
……まさか、あいつが来るとは。
凪が、そこにいた。
いつもの地味なスーツじゃなく、
淡い色のワンピースに髪を巻いて。
いつもより表情がやわらかい。
(……おい、姉貴……)
俺は席につきながら、あえて何も言わなかった。
凪が名前を名乗ったときも、黙っていた。
俺の名前を聞いて、明らかに戸惑っていたけど。
――さて。
目の前で不安そうに笑う彼女の仕草に、
ふいに、口元が緩んだ。
“無害”で“地味”な女。