うちの鬼畜社長がお見合い相手で甘くて困る
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「うちの会社、グループ会社と合併するらしいよ」
そんな噂が、私たちの部署に流れたのは、月曜の朝だった。
最初は誰かの冗談かと思ったけれど、課長も妙に言葉を濁していた。
社内の空気が、ほんの少し、張りつめている気がする。
「うちの部署、なくなるかもって話もあるよ」
「吸収合併ってことじゃない?」
「誰が責任取るのかな……」
不安そうな声が、会議室の外から聞こえてくる。
(……海龍くん、大丈夫かな)
真っ先に浮かんだのは、その顔だった。
あの人が、どれだけこの会社に心血を注いできたか――私は知っている。
完璧主義で、誰よりも厳しくて、でもその裏でずっと孤独と闘っていた。
いつも最後まで、ひとりで責任を引き受けてきた人。
そんな彼が今、どんな顔をしてこの話を聞いてるんだろう。
(……本当は、話したい)
「大丈夫?」って、聞きたい。
少しでも、力になりたい。
けど――。
私の立場で、どこまで踏み込んでいいのか、わからない。
仕事中に、そんな話をする勇気もない。
プライベートのLINEも、最近はあまり返ってこない。
それだけ、忙しいってこと。
それだけ、今は大変なんだろうって、思いたい。
でも。
でも――やっぱり、心配なんだよ。
「海龍くん……」
デスクのパソコンを見つめながら、そっと胸の中で名前を呼んだ。
そんな噂が、私たちの部署に流れたのは、月曜の朝だった。
最初は誰かの冗談かと思ったけれど、課長も妙に言葉を濁していた。
社内の空気が、ほんの少し、張りつめている気がする。
「うちの部署、なくなるかもって話もあるよ」
「吸収合併ってことじゃない?」
「誰が責任取るのかな……」
不安そうな声が、会議室の外から聞こえてくる。
(……海龍くん、大丈夫かな)
真っ先に浮かんだのは、その顔だった。
あの人が、どれだけこの会社に心血を注いできたか――私は知っている。
完璧主義で、誰よりも厳しくて、でもその裏でずっと孤独と闘っていた。
いつも最後まで、ひとりで責任を引き受けてきた人。
そんな彼が今、どんな顔をしてこの話を聞いてるんだろう。
(……本当は、話したい)
「大丈夫?」って、聞きたい。
少しでも、力になりたい。
けど――。
私の立場で、どこまで踏み込んでいいのか、わからない。
仕事中に、そんな話をする勇気もない。
プライベートのLINEも、最近はあまり返ってこない。
それだけ、忙しいってこと。
それだけ、今は大変なんだろうって、思いたい。
でも。
でも――やっぱり、心配なんだよ。
「海龍くん……」
デスクのパソコンを見つめながら、そっと胸の中で名前を呼んだ。