私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う

5

会社の休憩スペースで、ランチを食べ終わったタイミングだった。

「ねえ、風花ってさ、野田と同郷で仲いいよね?」

同期の奈々未が、スマホをいじりながらふいに言った。

「……え? うん、まあ」

とっさに返したけれど、どこか心がザワついた。

「じゃあさ、合コン、セッティングしてくれない? 野田くん、イケメンだし!
 大学の友達が“ああいうちょい悪風な人が好き!”って騒いでてさ~」

あっけらかんとした口調で笑う奈々未。

風花は笑おうとしたけれど、うまくいかなかった。

「……えー、どうだろ、野田、合コンとか行くかな」

「頼んでみてよ~、風花ならいけるでしょ? 仲いいし!」

奈々未はそう言って、何の悪気もなさそうに去っていった。

野田と目が合うことが増えた、ここ最近。
たぶん、あの日のこと――会議室で泣いてた私を、気にしてくれてるんだと思う。

「合コンか……」

ぼそりと、つぶやいた自分の声がやけに響いた気がして、
私はそっと、口をつぐんだ。
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