私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う

7

帰宅して、靴を脱いで、そのままベッドに滑り込んだ。
今日一日、濃すぎる。

枕に顔をうずめると、ふんわりと薫る石鹸の匂い。
どこか野田に似ていて、胸の奥がきゅっとなった。

……私、野田になんてこと言われたんだろう。

“今も推しなんだけどね”

“もう、推し活はやめる。覚悟しておいて”

思い出すたびに、胸が熱くなる。
頭の中に、野田の真剣な目と、優しく笑った顔が交互に浮かんでくる。

「……っ!」

じわじわと顔が熱を持って、枕に顔を押しつけた。
心臓が、さっきからうるさいくらいに鳴ってる。

野田が言った“覚悟しておいて”って、どういう意味だったんだろう。

……どうしよう。
全然、眠れそうにない。
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