私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う

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あの日以来、まともに話せないまま、毎日が慌ただしく過ぎていった。
部署ごとに忙しさの波は違うけれど、野田も私も、連日遅くまで残業しているのは知っている。

そんなある日――ちょうどお盆前の金曜日。
ふとスマホを見ると、野田からLINEが届いていた。

> お盆、帰る?
俺、車で帰るけど、一緒に帰省しない?
金もかからないし、荷物多くても大丈夫。



一瞬、画面を見つめて固まってしまった。

……一緒に帰省?

「車あるから」「金かからないし」なんて、あくまで合理的な提案に見える。

(どうしよう……どう返せばいいんだろう)

胸の奥が、ふっと熱くなった。
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