私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う

12

車で30分ほど。
うちの実家は、野田の家よりも少しだけ街に近くて、まわりに家やお店がぽつぽつと見える。

「家まで送るよ」と言われたけれど、さすがに今日のあれこれを思うと、心の準備が足りなくて。

「ここでいい、今日はやめておく」
私は近くのコンビニの前で車を停めてもらった。

「そっか」
野田はハンドルから手を離し、私をちらっと見る。

「じゃあ、3日後な。帰るときはまた連絡する」
彼の声は、さりげないけど優しかった。

「……うん。ありがとう」

私はドアを開けて、車から降りる。
エンジン音と共に、野田の車がゆっくりと走り出す。
その背中を、私は静かに見送った。

胸の奥が、やさしく疼いた。
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